「羽田新ルート問題」をめぐる“日米密約”が民主主義を破壊する!

国民よ、主権者になれ!
稲垣 久和 プロフィール

「軍民共同使用」の検討を急げ

今われわれがここで検討したいのは、横田空域もさることながら横田基地ないしは総面積約7.14㎢「東京ドーム約150個相当」という広大な飛行場の一部でも民間旅客機に使用させてもらう「軍民共同使用」という案である。

「使用させてもらう」というのは、それ自体おかしな表現で、もともと日本国の飛行場であったものだ。日本側に使用する権利があると言うべきだろう。そうすれば都心低空飛行の危険は避けられる、と。

筆者が夢想的な駄文を書いていると思わないで欲しい。これはすでに国側が「首都圏空港の未来」というタイトルで公表している調査報告書の中で正々堂々と出している案である(『首都圏空港の未来―オープンスカイと成田・羽田空港の容量拡大』首都圏空港将来像検討調査委員会編、2010年。筆者はこの報告書の重要性を航空評論家の秀島一生氏からご教示いただいた)。

首都圏の空港は現時点で羽田と成田の二空港である。両方とも国内・国際便に使用されている。本レポートによれば、両方合わせて2007年のレポート執筆時点で国際・国内の発着便は53万回/年であった。

それを「人々の顔と暮らし」を一切考慮に入れないで、即物的に統計と数字だけで将来の発着便を2倍の100万回/年にするといった最大の楽観的展望をすると、まさにこのようなレポートになる。

大きな中長期計画にのっとって、アジアゲートウェー構想・オープンスカイ政策により、就航先を含む航空市場の完全自由化がなされたとする。首都圏では、成田空港、羽田空港だけではなく、横田飛行場と茨城空港をも使用し全部で首都圏4空港とする(もともと羽田、成田の2空港のみでは首都圏空港としては無理がある、という前提がある)。そして2030年を目途に、首都圏全体で約2倍の発着便の100万回/年に増大するというシミュレーションをしている(成田30万回、茨城と横田で10万回、羽田が63万回で合計100万回という試算)。

茨城、横田を入れれば10万回増えるというのは驚きの数字である。そして航空旅客数は国内外合わせて9800万人から1億7000万人に増える。このレポートの結論部の最終ページは次のように記す。

現在、羽田空港はA、C滑走路が南北に、B、D滑走路が東西に井形になって交差している。その上で「拡張は段階的に進めることが必要である。まず、成田空港の発着容量の30万回/年への拡張をなるべく早期に実現することが望まれる。その状況と需要動向を見定めつつ、羽田空港A滑走路の南側延伸と旧B滑走路(B滑走路北側に平行)の再活用のプロジェクトを具体化すべきである。そして、第3段階でC滑走路沖への新たな平行滑走路(E滑走路)の整備の実現に向けて合意形成を図るべきである」。

しかし、同じ統計を使って次のようにも算定できる。もし旧B滑走路の再活用とA、C、Eの南北の平行滑走路が従来のように南側の東京湾側のみを使用し「海から出て海から入る」というルールに徹していれば、現時点で大幅な発着便と旅客数の増大が見込まれるということだ。

だからここでの争点はさらに北側に、きわめてリスクの大きい都心低空航路を2本通すことのメリットがどれだけあるのか、ということである。同書によれば現在のA、Cの2滑走路だけで、都心低空を通すことで、45.8万回から48.8万回増えることになり、わずか3万回増えるだけである。