ある職場で一人が育休を取得したら、確かにその職場はその分大変になる。しかし同時に、育休を取得しないとその分その家庭も大変になる。これらはどちらも当り前である。仕事に労力が必要なように、一つの命が育つのには相応の労力が必要であるからだ。

つまり、本来「替えがきかない」事態は仕事と育児どちらにだって起こりうるし、仕事も育児もどちらかを優先させないといけないという話でもないのに、日本では育児に比べ仕事の社会的価値が相対的に高すぎるため、育児のために仕事に「替えをきかせる」ことや育児のための仕事の中断に対し「周囲の理解を得る」ことが一方的に難しくなっているのだ。

そしてこの偏った仕事至上主義の価値観に、育児は女性が担うべきという日本に強く残る偏ったジェンダー観が加わった結果、議員であっても他のどんな職業であっても、仕事をする男性の多くが、育児でなく仕事に対してのみ「替えがきかない」と心配し、仕事でなく育児に労力を使うことへのみ「理解が得られない」と心配してしまうのだと考えられる。

では海外ではどうだろうか。

議員の育休制度が進む海外

海外では近年、議員の産休・育休関連の制度を整える国が増えている。代表的なのがノルウェーで、ノルウェーでは国会議員の休暇が働く人の権利として保証されており、育児休暇も病気休暇も取得できる。

取得時の「替えをきかせる」仕組みもよく考えられており、ノルウェーでは国会議員は比例代表制で選ばれるのだが、議員が休暇を取得した場合は、選挙で各党の次点だった候補が代理議員として復帰までの間の業務をこなす制度が整っている。この制度は、当選できなかった候補が議員としての経験を積むことにつながるため、政治家全体のレベルを底上げする効果があり、結果的に議員が代理を頼みやすい、つまり休暇を取りやすい環境を生んでいる

ノルウェーに限らずこのように議員の産休・育休制度を整える国は欧米を中心に世界的に増えてきており、また産休や育休の制度のない国でも、代理投票制度やあらかじめ代理議員を決めておくペアリング制度など、議員の出産・育児に対応する制度を整えている国は多い。

2018年6月、パートナーの男性とともに生まれたばかりの女の子を抱えて記者団の前に登場したアンダーソン首相。国家トップが任期中に出産したのは、パキスタン首相(1990年)に次いで2度目

そんな中、昨年ニュージーランドでは女性のアーダーン首相が6週間の産休を取得した。産休中は副首相が代理を務め、業務に支障をきたす事もなく復帰した。産休を取得する際も批判どころか野党を含め多方面から祝福の声が上がっていた

このように、海外では議員が産休や育休を取得することに対して驚くほど前向きな傾向がある。