「異世界モノ」ライトノベルが、現代の「時代劇」と言えるワケ

意外と知らないブームの理由
大橋 崇行 プロフィール

小説のジャンルはかつて、ミステリ、SF、ファンタジーなど、内容的な様式性によって作られるものとされていた。しかし現在では、小説ジャンルを読者が似たような内容を持つ小説を読んだり、書いたりする共同体を作り上げ、コンテンツを通じてコミュニケーションをとる媒介として捉える考え方がある。その意味で「なろう系」小説は、非常に現代的な「ジャンル」として形成されているのである。

 

多様化する「異世界」と戦略的執筆

「なろう系」に目を戻せば、これらの作品が、必ずしもパターン化された設定や物語を再生産し、消費しているだけではない点も指摘しておく必要がある。

たとえば、「異世界」を舞台とした「小説家になろう」投稿作品でも、「異世界」におけるミステリに正面から取り組んだ片里鴎『異世界の名探偵』(旧題:『ファンタジーにおける名探偵の必要性』)や、世界観の描写にこだわりを見せるミノ『終焉世界』のように、マンガ、アニメ文化とは異なる文脈を含んだ作品へも広がりが生まれている。

「小説家になろう」に「異世界モノ」作品が投稿されるようになったのは、もともと、RPGの「魔王」を主人公とした『オーバーロード』の丸山くがね、『幼女戦記』のカルロ・ゼン、「なろう系」の広がりにおいて大きな役割を果たしたと考えられる『ソードアート・オンライン』『アクセルワールド』の川原礫など、「小説家になろう」の前に多くのユーザーを獲得していた小説投稿サイト「Arcadia」で活動していた作家が、ゲームを題材にした小説を多く発表していたことと無関係ではない。したがって、これはある意味で必然的な流れであろう。

また、小説の書き手の側で、むしろ積極的に「なろう系」の持っているパターンを利用している層が少なからずいることも重要である。これは、商業ベースでの書籍化されることを目指す意図が背景にある。