「異世界モノ」ライトノベルが、現代の「時代劇」と言えるワケ

意外と知らないブームの理由
大橋 崇行 プロフィール

SNS的性質をもつ「小説家になろう」

このように、誰でも手軽に小説を書くことができるという状況は、さまざまな効果を生み出している。たとえば、メディアにおける作品の広がり方の変化だ。

かつてのライトノベルでは新人賞などからデビューした作家が、雑誌に掲載したり、文庫書き下ろしでデビューしたりする形をとっていた。したがって、日常的にライトノベルを読んでいる読者以外は、まずはアニメーションなどにメディアミックスされた作品を手に取ることが多かった。

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これに対して小説投稿サイトでは、読者が無料で読めるだけでなく、投稿者たちは同じサイトに投稿している作品をお互いに読み合う。そのため、書籍として発売される前に、すでにユーザーに作品が知られていることが多くなった。

また、小説投稿サイトの隆盛と、イチゼロ年代におけるインターネットの使い方の変化とが、重なり合っていることも重要であろう。

たとえばTwitterは現在、フォローワーが似たような考え方や趣味を持つユーザー同士で限られ、そうではないユーザーの発信する情報は、自ら検索して探さなければほとんど接しない状況になっている。逆に言えば、ユーザーは自分の嗜好に沿った情報に、アプリを開くだけでほとんど自動的に接することができるようになっているのが現状である。

 

「小説家になろう」に代表される小説投稿サイトは一種のSNSとしてのシステムを持っているため、当然、それと同じ状況が生じている。その結果、同じような作品を読むユーザーたちの間で、しだいにひとつのコミュニティが形成されていく

このことは裏を返せば、一度コミュニティが形成されると、そこから読者、書き手が外に出ていくことが難しくなる事態を招く。作品のパターン化がより強固な形で進展し、そこから外れた作品が読まれにくくなるのだ。一方で、同じジャンルの小説を読む<作者―読者>の間での凝集性は、従来の小説に比べてより緊密なものとなる。このことが、「小説家になろう」で「異世界モノ」のジャンルが大きく広がった、ひとつの要因だと言える。