「異世界モノ」ライトノベルが、現代の「時代劇」と言えるワケ

意外と知らないブームの理由
大橋 崇行 プロフィール

独自の世界観「ナーロッパ」

こういった「なろう系」小説の舞台となる「異世界」について、2018年のはじめ頃から「ナーロッパ」という用語でまとめられるのを、ネット掲示板「5ちゃんねる」上で見かけるようになった。

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これは、「なろう系」小説で描かれる「異世界」が、多くの場合、ゲーム(RPG)の『ドラゴンクエスト』シリーズや、『ファイナルファンタジー』シリーズが持つような「西洋ファンタジー風」の世界観を持っていること。魔法が発達しているにもかかわらず農業や技術・文化のレベルが遅れていること。そこで登場する食べ物や身分制度などが世界観の元になっているらしい時代とずれていることなど、歴史的な事実とは異なりつつ、ファンタジーとしてもけっして緻密ではない設定が、多くの作品で同じように共有されていることを指した用語である。

それでは、なぜこのようにパターン化した設定、ストーリーが、次々に生み出されるのか。ここには第一に、「小説家になろう」に投稿する多くの書き手が、アマチュアであることが関わっている。

 

オリジナリティにあふれた作品を書ける人間は、ごく一握りだ。しかし、このように設定や世界観、物語がパターン化されることで、そのパターンを踏まえた上でさまざまな要素を組み込んでいけば、誰でも手軽に小説を書くことができる。

そのため、「異世界」に飛ばされた主人公が持つ能力は、書き手の得意なジャンルを活かして他の作品と差異化できる部分である一方、寄席の興行で行われる大喜利のように、組み合わせからどのように作品を展開するかという部分で楽しまれることになる。