「異世界モノ」ライトノベルが、現代の「時代劇」と言えるワケ

意外と知らないブームの理由
大橋 崇行 プロフィール

「異世界モノ」の4類型

主人公が「異世界」に行くというのは、ファンタジーにおいて古典的な構造のひとつである。しかし、その部分で旧来の作品との共通性を指摘することに、あまり意味はない。

「なろう系」における「異世界モノ」と呼ばれるジャンルがどういう作品群なのかについては、具体的に作品を追っていけばもちろんそれぞれに違いはあるものの、大まかな作品の傾向をまとめると以下の4つの点を挙げることができる。

(1)主人公が死亡して生まれ変わる、気が付くと現実とは別の世界にいるなど、なんらかの形で西洋ファンタジー風の「異世界」に飛ばされる。
(2)「異世界」に移ったあと、私たちが住んでいる現代の世界にある一つの能力やモノを引き継いでいる。あるいは、特殊な能力を与えられる。
(3)その能力やモノによって、転生した「異世界」に住む人々にとって有用かつ稀有な人物として認められ、その世界で活躍することができる。したがって、能力を得るために努力をする必要がない。
(4)(1)〜(3)の結果、男性主人公がモテることができ、「異世界」の少女たちに囲まれる。

(1)の点に関しては、少し前までの「なろう系」小説においてはなぜか、冒頭で主人公がトラックに跳ねられて死亡する、ということが定番であるかのように言われていた。実際にそういう作品もかなり見られたのだが、2019年に入ってからはそこまで典型的な作品はだいぶ少なくなっている。

 

一方で、主人公が飛ばされる「異世界」が、多くの場合が西洋ファンタジー風の世界観になっている点や、ここで挙げた物語のパターンは、基本的にほぼ共通していることが多い。

なお、ネット上で「なろう系」という呼び方がなされるときは、投稿作品やそこから書籍化されたものも含め、特にそうしたパターンに乗った作品を、半ば揶揄的にそう言っている場合が少なくない。したがって、「なろう系」という用語を使うこと自体、注意を要することをここに明記しておく。