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大事な遺産を親戚に横取りされない、遺言書の「書き方・書かせ方」

相続は 「早いもん勝ち」になったから

他の親戚に先に手続きをされれば、家も預金も奪われる。法改正によって相続の「抜け穴」が生まれた今、遺言書の重要性はさらに高まった。親子で協力し、遺産を確実にもらう遺言書を完成させよう。

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「不動産業者から『あなたの家の所有権の2分の1を取得しました』という連絡が来たのは、8月上旬のことです。何が起きているのかと、頭が真っ白になりました」

こう語るのは、埼玉県在住の佐藤太氏(62歳・仮名)だ。佐藤氏は本誌が報じてきた「早いもん勝ち」相続の被害にあったのだという。

「疎遠だった弟が、私に黙って、家の所有権の半分を名義変更し、業者に売ってしまったのです。

『長男・太に家を相続させる』という遺言書があるから、後で手続きをすればいいと油断しきっていました。家を手放すように業者から迫られるかもしれず、夜も寝られません」(佐藤氏)

今年の7月1日から施行された民法には、大きな「抜け穴」があった。

これまでは、遺言書に「長男に家を相続させる」とあれば、その通りに相続できるというのが常識だった。しかし、佐藤氏の弟のように、遺言書を無視して、法定相続分の所有権を勝手に名義変更し、売却することができるようになってしまったのだ。
「抜け穴」が生まれたのは、家の相続についてだけではない。

預貯金についても「早いもん勝ち」のリスクが生まれてしまった。

法改正前は、預金口座は死後凍結され、銀行ごとに名義変更をしないと、おカネを下ろせなかった。

だが、7月1日に始まった預金の仮払い制度では、銀行ごとに最大150万円(法定相続分の3分の1まで)を、単独で下ろせるようになった。弁護士の澤田有紀氏が解説する。

「たとえば、『長女に不動産を、次女に預貯金を相続させる』という遺言書があるとします。ここで、長女が勝手に預金を下ろし、次女に返してくれなければ、次女がもらう遺産を『取り逃げ』されてしまうのです」

 

家にせよ、預貯金にせよ、横取りされた財産を取り戻そうとすれば、不当利得返還請求の裁判を起こすしかない。しかし、「おカネは使い切ってしまった」と言われてしまえば、泣き寝入りだ。それに、肉親相手に訴訟を起こすのは心情的にも容易ではない。

つまり、7月1日からの法制度の「抜け穴」をついて、財産を横取りできてしまう異常な状況になっているのだ。

こうした厳しい状況を乗り越えるには、一つだけ方法がある。やはり、遺言書だ。
といっても、「分け方だけ書けばいい」、「遺言書に書けば、みんなその通りになる」と遺言書を簡単に考えると、これからは必ず痛い目をみる。

遺産を渡したい人に渡せる遺言書の「書き方」、そして遺産を親戚に横取りされない遺言書の「書かせ方」をみていこう。