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# 政治・社会

詐欺同然の海外渡航移植がまかり通るのは、学会の無策ゆえか

臓器移植の闇を追って・最終回
腎臓移植を願う人たちを食い物にする、詐欺同然の海外渡航移植がまかり通っているのはなぜなのか? それは、日本移植学会が既得権益にしがみついているからではないのか――ノンフィクション作家の高橋幸春氏が、海外の臓器移植の闇に迫る連載最終回!

その1 「パキスタンで腎臓移植手術を受けた日本人の悲劇

その2「民家で行われた腎臓移植手術の後、夫は再び腎臓を取り出された

その3「腎臓移植を願う日本人たちは、アジア各国をたらい回しにされた

HPは「閉鎖」されたが……

私は本連載前から、Nに取材に応じるように求めていた。また連載中、共同通信社がNに関するニュースを配信した。連載3回目を書いた直後に、再度取材に応じるように求めると、Nから連絡があった。

 

「ご連絡頂きましたが、申し訳ございませんが、先日お話しさせて頂きました通り、メディアの方々への取材をお断りさせて頂いております。

また、私なりに患者の皆様の為にも世界中を巡って頑張って来たつもりですが、この度の事も有り、万波先生を頼る事も出来なくなり、この仕事を続ける事を諦めました。今月を持って腎移植のサイトを閉めさせて頂きます。」

実際、NのHPは閉鎖された。しかし、私はこの言葉を信じてはいない。Nにはこれまでにも同様の「前科」があるからだ。

2008年11月、中国瀋陽市公安局は「臓器売買を禁止する衛生省規定に違反した」などとしてNを逮捕している。瀋陽や上海などの病院と提携、200人以上の日本人に臓器移植を仲介したとされる。しかし検察当局は、虚偽広告罪のみで起訴。Nは国外追放の判決を言い渡された。

日本に強制送還されてもNは、日本の警察当局に逮捕されることもなく、帰国から間もなくHPを開設し、今回の報道で「閉鎖」に追い込まれたのだ。

危ない渡航先と知りながらも

深田俊男さん(仮名)も、Nに翻弄された1人だ。糖尿病性腎症にかかり、医師から透析することを告げられ、海外での移植を考えた。

「2015年に、2つの斡旋組織を訪ねました」

1つは中国での移植で、費用は約2000万円。もう1つはインドネシアで12万ドル(約1400万円)と告げられた。差額は約600万円。

「どちらも怪しいし、危ないと思ったが、安いほうのインドネシアを選んだ」

インドネシアで移植が受けられると説明したのがNだった。2016年3月、最初に3万ドル支払った。

Nから連絡が入った。

「ゴールデンウィーク頃にはインドネシアに行ってもらいます」

しかし、そこからの道のりが長かった。その直後、インドネシアではなくカンボジアで移植手術が行われると聞かされた。

6月には深田さんに「朗報」が告げられる。

「ドナーが決定しました」

日本での臓器提供が極めて少ない現実を熟知している深田さんは、これで透析から解放されると思った。

「1日おきですからね、透析は。1年に1週間でいい、透析から解放される人生を送りたいという気持ちになっていました」

Nに言われるがまま6万ドルを支払った。それから2週間も経過していなかった。

「手術日が決まりました」

プノンペンの陸軍病院で移植手術が行われると説明を受けた。カンボジアは中国との関係が深く、医師は中国から派遣されてくるとささやかれている。

深田さんは残りの3万ドルをNに支払った。往復の旅費や滞在費は、深田さん自身が負担する約束になっていた。

すぐに旅行社に出向き、プノンペンまでの航空券を購入した。