中国初の「コストコ」が、オープン日に半日で閉店した「残念な理由」

このままでは中国すべてを養う羽目に
北村 豊 プロフィール

自殺行為だったのか

8月31日付の香港紙『蘋果日報(Apple Daily)』によれば、8月30日までの時点で上海コストコの会員数は10万人を突破したという。上述したように上海コストコの年会費は299元(約4485円)なので、上海コストコは開店からわずか4日間で2990万元(約4億4850万円)の年会費を獲得したことになる。

ところが、中国メディアによれば、開業から5日目の8月31日になると、状況が一変して上海コストコの商品売場にある退会窓口に多くの人々が行列を作り、担当係員は昼食を取る時間すらない有様だったという。

それは、上海コストコが開店記念に特別価格で提供した、飛天印マオタイ酒や五糧液などの目玉商品が売り切れとなり、その他の商品も開店の優遇価格から通常価格(それでも他所より安価だが)に戻ったことに起因するものだった。

退会窓口に並んだ人々に理由を尋ねたところでは、バスを乗り継ぎ、数十元のバス代を支払って上海コストコに到着したが、商品売場へ入場するのに何時間も行列し、ようやく入場したら目玉商品はすでに売り切れで、買いたい商品も見当たらず失望したという者や、コストコの商品は高価格・高品質で自身の生活レベルでは手が届かないとする者もいたのである。

台湾コストコは1997年に第1号店を高雄市に開設してから20年以上の歴史を持ち、2019年9月2日時点の倉庫店数は13カ所に上っている。

その台湾のネットユーザーは上海コストコが上述した「商品保証(不満足な場合は商品と引き換えに全額返金する)」を標榜することに懸念を提起し、中国人を相手にそのような商品保証を行うことは自殺行為であるとネットに書き込んだ。

これには多くのネットユーザーが同感を表明し、「中国人が食品の大半を食べてから不満だとして返金を要求すれば、それを真似る者は次々と現れ、最後はコストコが中国人の全てを養うことになりかねないのではないか」と結論付けたのだった。

 

最終的にコストコが中国人の全てを養うなどということは有り得ないが、9月1日付の全国紙『毎日経済新聞』はコストコの最高財務責任者(CFO)であるリチャード・ガランティ(Richard Galanti)とのインタビュー記事を掲載した。

それによれば同氏はコストコが2020年末から2021年初旬頃までに上海で2番目の倉庫店を開設することを計画しているし、将来的には中国のその他の地域にも倉庫店を開設することになろうと述べたという。

文頭に述べたように、米中貿易戦争は持久戦の様相を呈しており、打開策を暗中模索している状況で、終結の目途はおろかどのように決着するかは予想が付かない。そうした状況下の中で、米国企業として上海市に1号店を開設したコストコの決断は果たして吉と出るのか、凶と出るのか。

その成功の可否はトランプ大統領の政策次第でどのようにも変化するが、コストコが全中国人を養うことにさえならなければ、発展の可能性は大きいように思えるのである。