中国初の「コストコ」が、オープン日に半日で閉店した「残念な理由」

このままでは中国すべてを養う羽目に
北村 豊 プロフィール

むさぼり倒す中国人客

一方、コストコの会員になると、「2大保証」を享受することができる。コストコの紹介文には2大保証として次のような記載がある。

商品保証 :万一ご満足いただけない場合、商品と引き換えに、代金を全額返金します。(但し、家電製品だけは返品期限は90日間)
年会費保証:コストコのシステムやサービス内容にご満足いただけない場合、有効期限内であれば解約し年会費を全額返金します。(但し、退会から1年間は再入会不可)

コストコの主会員は会員カードを提示すれば非会員を2名まで同伴できるし、主会員と同じ住所に住む18歳以上の家族には家族会員として家族カードが1枚発行されるが、家族カードも非会員を2名まで同伴できるので、会員カードと家族カードを提示すれば主会員と家族会員を含めて最大6名が商品売場へ入場できる。

なお、会員カードは世界共通で、世界に782カ所(2019年9月2日時点)あるコストコの倉庫店へ入場可能であるが、世界中の会員数は約9580万人(2018年12月14日時点)である。

 

以上が上海コストコの概要であり、コストコの基礎知識だが、メディアが報じた上海コストコ騒動はこんな感じだ。

(1)上海コストコが開店する8月27日より以前に、コストコへ年会費を納入して会員となった人数は数万人を突破していたという。開店日の8月27日は火曜日で平日であり、開店は午前9時からであるにもかかわらず、上海コストコの周囲には朝早くから長蛇の列が出来ていて、その先頭は商品売場への入場口にある電動シャッター前で今か今かと開店の時を待っていた。この日、コストコは通常9時からの開店時間を30分早めたので、時刻が8時30分になり、電動シャッターが巻き上げを開始すると、列の先頭にいた人々は我先にとシャッターとフロアーの隙間に潜り込んで商品売場へ走り込み、多くの人達がそれに続いた。

(2)8時半の開店から40分後の9時10分頃に上海コストコへ車で到着した人によれば、その時すでに駐車場は満杯で、11時前には商品売場は人で溢れる状態となり、各所に配置された保安係は客の入場制限を行う必要性に迫られた。また、上海コストコの外側では係員が「駐車場はすでに満杯で、3時間待ちが必要です(The parking lot is full. It takes three hours to wait)」と書かれたプラカードを掲げて駐車待ちの自動車に注意を促していた。なお、当日、コストコ周辺における車の渋滞は延々3キロメートルにも及んでいたという。

(3)開店当日に入場口の電動シャッターが動き始めると、我先にと商品売場へ走り込んだ人々の中には酒類売場へ直行した人たちがいた。上海コストコが事前に目玉商品の公告を出していたからかと思われるが、そうした人たちは1498元(約2万3000円)という市場価格の半値で売られていた飛天印のマオタイ酒(貴州省の焼酎)の争奪戦を演じ、当該マオタイ酒は開店からわずか20分間で売り切れとなった。後日、あるネットユーザーがネットに書き込んだところによれば、彼は家族6人で4時間を費やして初日に開店と同時に入場し、マオタイ酒を12本、1人1本の制限が付いていた「五糧液(四川省の焼酎)」を6本購入し、その他に雑多な食品を購入したという。彼は同日夜にマオタイ酒6本と五糧液4本を転売して合計1万3800元(約20万7000円)の利益を上げ、コストコの年会費、駐車料金、食品代金を差し引いて1万2000元(約18万円)をわずか半日で稼ぐことに成功したという。

(4)上述した酒類以外では、米国のKitchen Aid社のスタンドミキサー(Stand Mixer)7580型を例に取ると、コストコの価格は4999元(約7万5000円)であるのに対して、ネット価格は7499元(約11万2500円)であり、たとえ販売促進価格でさえも6499元(約9万7500円)なので、その差は1500元(約2万2500円)もある。東芝のスチームオーブンレンジA7-320D型は、コストコでは3599元(約5万4000円)だが、ネットショップでは5399元(約8万1000円)であり、家電量販店の蘇寧電器が販売キャンペーンを行う時の価格でも4399元(約6万6000円)である。フィリップスの75インチテレビはコストコでは1万1999元(約18万円)だが、ネットショッピングの“京東商城”が誇る主力店では1万3999元(約21万円)で、2000元(約3万円)もの差がある。

(5)開店の午前8時30分から2時間が過ぎた頃には商品売場は客であふれて立錐の余地もない状態に陥り、買い物を終えて会計を待つ客がレジの前に延々と並び、その横にはレジに並ぶ客を誘導する係員が「レジの行列は2時間待ちです」と書かれたプラカードを掲げて客に忍耐を求めていた。しかし、商品売場の混乱に危険を感じたコストコは急きょ午後の営業を停止することを決断し、次のような通告を掲示して商品売場の外で入場を待つ人々に理解を求めた。すなわち、「尊敬する会員の皆さん、今日は。売場の通行が人の波で滞っているので、さらに良い買い物環境を提供するために、本日8月27日の午後は商品売場の営業を見合わせます。何卒入場をご遠慮ください」という内容の掲示だった。

(6)突然の営業見合わせの通告を受けて、炎天下で長時間にわたり入場を待っていた人々の中には強引に入場しようとして保安係と衝突した人も複数いたが、コストコは午後の営業休止を強行した。商品売場が収容能力を超えた客数で危険な状態に陥っていたことが午後営業休止の理由ではあるが、それとは別にコストコ側が予想だしなかったことが発生していたことも理由の1つであった。