2019.09.12
# 心理学 # ライフ # ストレス

「家にいるのに帰りたい…」と感じてしまう不思議な心理の「正体」

言葉では説明しづらい“あるある”
西多 昌規 プロフィール

「予期不安」と「日内変動」

「ああ、今日も夜まで仕事終わりそうにない」

「またあの部長といっしょにいないといけないのか」

朝起きたときから、キツい仕事をイメージしてしまうことは珍しくない。単純にウンザリするのはもちろんだが、心身ともに消耗してしまう自分の姿が思い浮かんでしまう人も少なくないだろう。「仕事はちゃんとやらなければ」と考えている真面目な人は、特にそうだろう。

Photo by iStock

待ち受ける疲れ果てた自分を想像して、「今日自分は大丈夫だろうか」「できればこのまま休んでしまいたい」という、不安が生じてはいないだろうか。パニック症のように激しいものではないが、消えることはない不安である。

「予期不安」という症状がある。主にパニック症などを持つ人に見られ、実際にまだパニック発作を起こしていなくても、発作がいつまた起こるのかという不安感が常に付きまとう現象を指す。予期不安が強くなれば、助けを求められない場所(飛行機など乗り物が多い)を、避けるようになる。

厳密には異なるかもしれないが、仕事にかかわる不快な経験、苦手な対人関係などを思いだし、「またか」という思いが生じれば、予期不安の要素が大きくなる。家を出る前から、早く安心できる場所(=家)に、帰りたくなるのも無理はないのではないだろうか。

さらに朝から「早く帰りたい」気持ちになってしまうのは、「日内変動」による影響の可能性がある。日内変動とは、体温や血圧などのバイタルサイン、ホルモンの分泌など生体機能が、一日のなかで変動することをいう。日内変動は体内時計によって支配されており、たとえば体温は夕方にピークを示す。

 

精神状態にも、日内変動がある。うつ病に見られる抑うつ気分が、一日のなかでも波があり、朝方は最も気分が落ち込み、午後から夕方にかけて気分が上がってくる現象は、古くから知られている。特に体内時計が夜型傾向にシフトしている若年者では、うつ病ではなくても、朝は意欲が低下し、気分、思考がネガティブになりがちなりやすいと考えられる。

ただ、「サザエさん現象」と言われるように、日曜日の夕方の時点で既に「帰りたい」と思う人もいるだろう(わたしも月曜日当直のときは、そうだった)。「日内変動」よりも、「予期不安」の要素が、「家に帰りたい」現象の要因としては優位なのかもしれない。

もっと掘り下げた議論や、異なった見方ももちろんあると思う。ただわたしはこれまで述べたように、日本ならではの労働条件の過酷さ、要求水準の高さに加えて、「予期不安」と「日内変動」という要素が、一日のスタート時点から、既に終了時点での安らぎを求めるという現象を引き起こしている可能性があると考えている。日本人の慢性的睡眠不足の傾向が、予期不安や日内変動を強めている可能性も付記しておく。

関連記事