「望まない延命治療」は、なぜ医療の世界からなくならないのか

後悔している家族も多い
週刊現代 プロフィール

家族にとって負担になるのは、なにも本人の病院代だけではない。

「高齢者だけの世帯が増加している今、患者の見舞いに行くための家族の交通費も問題になっています。

見舞いをする側も高齢で車の運転や電車移動を避けるので、タクシーが主な手段になります。そうなると一回につき往復2000円でも月6万円がかかる。現在、国民年金の平均額は月額5万5000円。交通費だけで足が出てしまいます」(介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏)

確かに命はおカネに替えられない。だからこそ家族は良かれと思い患者のためにおカネをつぎ込むのだろう。だが、それが本人の望まない治療に繋がり、家族の負担になる。お互いにとって良いことなどなにもない。

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「自宅で静かに死んでいく」ために

「自宅で静かに死んでいきたい。誰もがそう願うものでしょう。ですが、在宅死こそ『言うは易く、行うは難し』。思い描いた死に方をするためには周到な準備が必要です。

まずなにより、自宅で死にたいという本人の強い意思。さらにはそれを叶えてあげられる家族のサポート。そして医者と介護士、看護師の協力体制。これらが揃ってはじめて本当の意味での在宅死を迎えることができるんです」(ポーラのクリニック院長の山中修医師)

自宅での安らかな最期は、漫然と過ごしていて手に入るものではない。「来るとき」に備え、あなたと家族にはやっておくべきことがある。

 

「具体的な準備としては、第一に訪問診療に対応してくれるかかりつけ医を見つけ、関係を築くことです。それまでお世話になっていた主治医がいても、その先生が訪問診療をしてくれるかはわからないですからね。

それに人生の最後の段階になっていきなり知らない先生を紹介されても、短時間で信頼関係を築くのは無理です。

また、他にやっておくべきなのが『事前指示書』や『私の希望表明書』を残しておくこと。これは自分がどんな死に方を望むか、もしくはどんな治療は受けたくないのかを示すための書式です」(満岡内科クリニック院長の満岡聡医師)

この「事前指示書」はそれぞれの自治体や病院が独自のフォーマットを作成しているので、各役所の窓口や病院受付で入手することができる。

さらに「私の希望表明書」は日本尊厳死協会のHPを検索すればすぐにヒットするので、それを利用するのも手だろう。

たとえば「私の希望表明書」には「最期を過ごしたい場所」や「私が大切にしたいこと」、「医師が回復不能と判断した時、私がして欲しくないこと」などのチェックリストが載っている。

これに沿って書面を作り、親族や医療関係者に渡しておくだけで無用な延命治療を避け、自分にとってよりベストな在宅医療を受けることができる。

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