「望まない延命治療」は、なぜ医療の世界からなくならないのか

後悔している家族も多い
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病院からの「請求書」を見て…

いくら病院で治療費と入院費がかかっても、医療保険があるから大丈夫。75歳以上の後期高齢者なら医療費は1割負担だけ。さらに一定の自己負担額を超えるとおカネが戻ってくる高額療養費制度もある。延命治療で破産するなんてありえない。

あなたがもしそう考えているのなら、残念ながらそれは幻想だ。

「むやみに延命治療を続けると想定外の出費がかさみ、深刻な家計圧迫が起こります。

たとえば日々の食費に入院着レンタル代。服の洗濯代や毎日の交換が必要となるおむつ代など、入院が長期化するにつれ、知らず知らずのうちに様々な費用が雪だるま式に増えていくもの。

病院からの請求書を見て、はじめて負担の重さに気がつくケースがほとんどです」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)

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保険がきかない出費のなかでも高額なのが、患者が個室での治療を選んだ際に発生する差額ベッド代だ。どんな病院でも差額ベッド代は一日1万円以上かかる。それだけで月30万円になる。

自分の意思で贅沢な個室を選ぶのだから、そのくらいの出費はして当たり前。そう考える向きもあるだろう。だが、実情はもっと悲惨だ。

認知症と誤嚥性肺炎を併発して都内の総合病院に入院していた徳井純一さん(仮名、79歳)の妻・佳子さん(77歳)の談。

「1年半前のことでした。夫の認知症が進み肺炎も悪化していくタイミングで、病院から個室への移動を切り出されたんです。

それまで夫は4人部屋に泊まっていたのですが、『夜中、純一さんのうめき声がひどいと苦情が出ています。今後は人工呼吸器の取り付けも必要になる。そうなると場所も取ります。個室に替えてくれないと対応できません』と、有無を言わさずに決められた。

夫の状態を考えれば病院を替えることはできない。結局、病院の提案を受け入れるしかありませんでした」

純一さんにあてがわれた部屋は一泊2万円。佳子さんは貯金を切り崩して入院費を捻出していたが、家計は逼迫した。

 

さらに病院側は「純一さんのため」という建て前で毎日のようにリハビリを繰り返した。実は、厚生労働省は「制限回数を超える医療行為(リハビリは月13単位。1単位は20分)」は保険適用外となると定めている。

佳子さんは病院側が良心からリハビリをしてくれていると思っていたが、さにあらず。病院からは特段の説明もないままだったが、翌月の請求書を見て驚愕した。リハビリ代だけで10万円を超えていたのだ。

これ以上はおカネを出せない。ギリギリの状態が続く中、純一さんは肺炎で亡くなる。皮肉なことに、夫の死が「医療費地獄」から抜け出すきっかけとなった。

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