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「望まない延命治療」は、なぜ医療の世界からなくならないのか

後悔している家族も多い

こんなに苦しいのに、なぜ…

過度な延命治療は患者とその家族を苦しめることになる。それがわかっていながら、なぜ病院は患者をそっと死なせてくれないのか。

法律的な観点からその理由を解説するのは、埼玉社会保険病院の元院長の鈴木裕也氏だ。

「医師法の19条で、患者さんが治療を望んだ場合、断ってはいけないという『診療の義務』が定められています。一方でこの法律では、患者さんや家族が『もう治療を止めてほしい』と言ったときに、どう対応するかは定められていない。

終末期の場合には、医師が治療を止めた際に起こることを患者さんや家族に説明し、同意があれば止めることはできますが、患者本人の意思がなく、家族も治療の中断を決められない場合は、治療を止めることが難しいのです」

家族の意思も曖昧なまま治療を中断して、万が一家族から「あの医者が私の家族を死なせた」と訴えられたら堪らない。実際、訴訟になったケースも少なくない。それを危惧して、患者が苦しんでいても治療を施すことがある。それが病院というところなのだ。

 

一方、緩和ケアを専門とする萬田診療所の萬田緑平院長は、「そもそも過度な延命治療を受ける患者の苦しさを、医師が知らないことも原因の一つだ」と指摘する。

「『患者を少しでも長生きさせることが使命』と教わってきた医師にとって、患者さんの死は敗北にほかなりません。だから、治癒する確率が1パーセントしかなくても、手術や抗がん剤治療に挑戦する。

ほとんどの医師が『治療を止めたほうが患者は楽になる場合もある』ことを知らないのが現実なのです」

前出の鈴木氏も「多くの医師は終末期医療の教育を受けないまま育ちます。治療をするのは得意ですが、治療を止めて看取るということに関しては、基本的には教わっていない。

もちろん患者の安らかな死を支えようと向き合う医師もいますが、終末期の患者が苦しんでいても、どうすべきかわからないという医師も少なくないのです」と付け加える。

みかわしまタワークリニック顧問の岡野匡雄氏は、まれにだが、経営のために過度な延命治療を続ける病院もあると指摘する。

「これから最期を迎える患者さんに対しても、酸素吸入や静脈栄養といった治療を行えば、多額の医療費がかかる。その分、病院に入るおカネは増えることになる。

病院の中には、終末期の患者を積極的に受け入れ、高額の医療措置を施して儲けようとするところがあるのも事実です」