日産・西川社長「事実上の解任」その裏側にあった「役員たちの攻防」

そして、ほくそ笑むルノー
井上 久男 プロフィール

ほくそ笑むルノー

一方で、日産社内には冷ややかな見方もある。「日産の企業価値を上げるための判断というよりも、自分が世間からどう見られているかを気にしている社外取締役も多く、西川氏を辞任に追い込んで自分のメンツを果たそうというだけの判断で、深く物事を考えていない」といった声も出ている。

そして、この「西川解任」をほくそ笑むのがルノーのジャン=ドミニク・スナール会長だ。

ルノーのスナール会長(Photo by gettyimages)

日産との経営統合を目論むルノーの意向を、西川氏はこれまでことごとく排除してきた。検察と組んだ「クーデター」でゴーン氏を追放したのも、ルノーとの経営統合を避けるためだった。1999年の提携時から幹部だった西川氏は、ルノーの手口を知り尽くしている面がある。

豊田氏が西川氏を擁護してきたのも、ルノーとの今後の交渉は西川氏なしでは乗り切れないと見ていたからだろう。

 

豊田氏は元経済産業審議官。いわば経産省の代理人的な存在として社外取締役に就いている。日本政府としては、国の基幹産業である自動車をフランス側のいいようにはさせたくない思いがある。豊田氏は日本政府の意向を西川氏に伝え、この2人が中心となって「対フランス戦略」を進めるはずだった。西川氏の辞任で、その基本戦略が狂うことになる。

肝心の西川氏の後任は10月末までに決める見通しだ。指名委員会が現在10人ほどの候補者を絞り込んでいる。外国人や女性も含まれているそうだ。

しかし、ルノーとの交渉が待ち受けている状況では、両社の提携の歴史を知り、日産の内部事情を把握できる人材が起用される可能性が高い。開発担当の中畔邦雄副社長や関潤専務の昇格が有力と見られる。