日産・西川社長「事実上の解任」その裏側にあった「役員たちの攻防」

そして、ほくそ笑むルノー
井上 久男 プロフィール

社外取締役たちの攻防

さらに、この西川氏のSAR問題が尾を引き、日産が予定していた2500億円の社債発行が止まってしまった。社債を買う投資家らに、トップが関与する不祥事の説明ができなかったからだ。そうした点でも、西川氏のSAR問題は日産の本業にまで影響を及ぼすようになっていた。

筆者が「事実上の解任」と言ったのは、西川氏はまだやめる気はなかったからだ。正確には迷っていたというべきかもしれない。

 

そもそも、西川氏は今年6月の株主総会などでも「早い段階で次世代がマネジメントしていく状況にする」と述べ、遅くとも来年の総会までは退任すると見られたが、少なくとも9月に辞める腹はなかった。

日産は今年6月から社外取締役中心の指名委員会等設置会社に移行。9日の「西川辞任」を発表したのも、社外取締役の木村康議長、豊田正和・指名委員会委員長、井原慶子・報酬委員会委員長、永井素夫・監査委員会委員長の4人だった。

西川氏が辞任に踏ん切りがつかなかったのは、自らの人事権を握る社外取締役の意見が割れていたことも影響したと見られる。

木村氏と豊田氏と永井氏は、この時期での退任は早いと考えていたのに対し、井原氏は早期の退任を求めた。なかでも西川氏は、豊田氏を最も信頼していると言われ、その豊田氏が現段階での退任は不要と強く主張していたと見られる。

9日、会見する豊田氏(左)と永井氏(Photo by gettyimages)

しかし、井原氏に加え、他の外国人社外取締役が早期の辞任を強く求めため、取締役会の大勢に逆らえないと見た西川氏は辞任に傾いた。

こうした動きを見る限り、井原氏や外国人社外取締役は、「CEOの首に鈴を付ける」という点で社外取締役本来の仕事をしたと言えるだろう。