日産・西川社長「事実上の解任」その裏側にあった「役員たちの攻防」

そして、ほくそ笑むルノー
井上 久男 プロフィール

日産「空中分解」もあり得た

SARとは、あらかじめ決められた基準株価と、権利行使した際の市場価格の差を受け取る報酬のこと。西川氏によるSARの問題の発端は、西川氏が自宅を建てるために役員報酬の増額を要求したことだ。西川氏が権利行使を申請した後に株価が上昇したため、権利行使日を約1週間ずらして、「濡れ手で粟」で報酬を4700万円かさ上げした。

 

本来、日産ではSARの権利を行使する際、本人がメールで申請して、その後さらに直筆署名を提出する手続きになっているというが、西川氏はこの手続きを踏まずに、秘書に手続きをやらせたとされる。

そして、権利行使日をずらす判断をしたのがグレッグ・ケリー元代表取締役だという。西川氏に権利行使日をずらす意図はなかったにせよ、手続きも含めてルール違反となったため、トップとしての責任が問われたということだ。

昨年12月、保釈されるケリー氏(Photo by gettyimages)

日産の社員目線で言うと、結果として西川氏自身の利益のために社内ルールが守られなかったことになるので、「社長、それはずるいよ」ということだろう。

企業においては言わずもがなだが、「お金」に絡む問題は重要だ。特に日産のような製造業では、下請け部品メーカーも含めて現場は1銭単位のコスト削減に励んでいる。西川氏も役員としてコスト削減に大ナタを振るってきた。

そうした西川氏が自身の報酬に関して、社内ルールに反した行為によって利得を得ていれば、社員や取引先が納得せず、コスト削減にも前向きに取り組まなくなる。要は、「俺たちが汗水流して稼いだ金を、社長は不正に得ていたのか」といった感情が働くからだ。

ただでさえ、態度が不遜と言われ、社内求心力のない西川氏がトップのままでは組織が空中分解してしまうかもしれなかった。