# 地方創生

「ポンコツ経営者」と「おかしな公務員」が地方再生で大活躍するワケ

種をまき、草木は生い茂った
山田 崇, 吉田 基晴

受益者を探して巻き込んでいく

山田 自分ひとりの活動では限界がある。ムーブメントにならないと、社会は変えられない。そのとき、どうやって周囲を巻き込むかとか、考えられますか?

吉田 僕の場合は全方位外交です。すべての人を巻き込もうと考えている。漁師のおっちゃんから移住者の若者、子供、役場の人間、政治家にいたるまで。全員がハッピーになりうると考えているので。

山田 ただ、「自分事」としてとらえていない人も多いじゃないですか。

吉田 そうなんですよ。ゼロイチの事業って、先に待っていることがなかなかイメージしにくい。ウォークマンが登場する以前に「ウォークマンが欲しい」と思った人なんていなかったといわれるように。でも、ゼロイチが起こると、喜ぶ人がたくさんいるのも確かなわけで。

だから僕は翻訳家というか、「あなたの性感帯はここですよね?」って本人が気づいていないことに気づかせてあげる役目かなと。

 

山田 そうかあ……。私の場合、ビジョン・ミッションを作って、みんなで同じ方向に向かっていこうというのが、そもそもできない人間だと感じていて。むしろ自分の関心事にひっかかってくる人を、結果的に巻き込むというか。

吉田 僕も出発点は自分の関心事なんだけど、多くの人を巻き込まないと、ことが動かないと感じているんです。一人の生徒が複数の学校に就学できる「デュアルスクール」もそうでした。塩尻市でもたしか今年から……。

山田 塩尻市でいう「国内短期留学」ってやつですね。

吉田 そもそもは嫁さんの「お父ちゃんは美波町と東京を行ったり来たりできるけど、子供がいるから、私はそんなことできないじゃん」という言葉から始まった。「そうか。子供も美波町の学校と東京の学校を行き来できればいいんだ」と。自分の家族のための制度を作ろうとしたわけですが、それじゃあ動かなかったんです。

山田 東京の学校とは温度差があるでしょうしね。

吉田 向こうからすれば面倒くさいだけなんですよ。そこで、東京での子育てに不安を抱いていて、「田舎に移住体験させてみたいな」と思っているママさんとか、受益者になりうる人を探して、巻き込んでいった。

政治家や公務員さんも「この制度は俺が作った」と言えるようになれば、やる気を出しますよね。「これは他人事じゃなくて自分事だ」と考える人が増えたから、デュアルスクールが実現したんです。