# 地方創生

人口わずか6400人の町に「本社を置きたがる」企業のホンネ

チャンスは地方のほうが多い
山田 崇, 吉田 基晴

吉田 オールオアナッシングで考えないということですね。「二兎を追っちゃダメ」みたいな風潮がなくなってきているのは、いいことだと思う。ただ、それとは別の問題として、量が質に転化するところまで待てるかどうかというのは……。

山田 そっかあ。始めた頃は若くても、結婚し、子供ができてで、ライフステージも変わってきますからねえ。

吉田 僕からしたら、若い子のチャレンジを見ていて「それを3年続けてみ。何か結果が出てくるから」と思うんですよ。でも、その3年がなかなか難しい。「この先に素敵な副作用が待っているから」と断言するわけにもいかんし。

山田 そうすると、挑戦してから結果が出るまでのサイクルを短くしていくことですかねえ。

 

吉田 ああー。2~3ヵ月で結果が出るような小チャレンジをくり返して、成功体験を積み重ねつつ、3年後の大きな成果につなげると。

山田 私は「PDCAのPをスキップして、Dから始めろ。しかも、大きなDOじゃなくて、小さなdoだ」と言っているんです。小さく始めて、小さな成功体験を積み重ねていく。そのほうが結果はすぐ出るし、なにより第1ステップの踏み出しが軽くなる。始めなきゃ、何も変わらないので。

小さな町だからできること

吉田 小さくスタートするという意味では、実は、田舎はものすごく恵まれた環境にあるんですよね。家賃も安いし、人手が足りなかったら、無償でヘルプしてくれる人も多い。チャレンジを始めるにはベストです。

山田 吉田さんの本の中でも、東京で自分を見失っていた時代の話が出てきますもんね。小さな町に移った意味があった。

吉田 それはホンマにそうで。東京のような巨大な街では、ステークホルダーが全然見えない。サイファーの東京オフィスは新宿区の神楽坂にありますけど、例えばお祭りに参加したいと思っても、誰に声をかけていいかわからない。社会を変えるも何も、まず自分がどこに立っているのかが見えない。

山田 そのへん、田舎だと一目瞭然ですもんね。「百年の森構想」で有名な岡山県西粟倉村の大島正幸さんがよく言うんです。「うちは全住民で1500人だから、新幹線のぞみの1編成に乗り切るんだ」と。車内販売の売り子さんが往復できる規模で活動するのと、東京で活動するのでは全然違う。

吉田 小さな町でも、人間社会を構成するユニットはすべて備えているんです。だから、全体像が見えやすい。政治とは何なのか、住民とは何なのか、税金とは何なのか、選挙とは何なのか、神社とは何なのか……。40歳で美波町に引っ越して、ようやくいろんなことが理解できるようになった。