# 地方創生

人口わずか6400人の町に「本社を置きたがる」企業のホンネ

チャンスは地方のほうが多い
山田 崇, 吉田 基晴

素敵な副作用

山田 吉田さんのご本(『本社は田舎に限る』講談社+α新書)で、すごく共感した部分があって。若い人たちに「とにかく続けろ」とアドバイスするところ。実は、僕もまったく同じことを若い人たちに言っている。

吉田 僕の経営するサイファー・テックが赤字時代の話ですよね。同業者がどんどん廃業するなか、5~6年、続けていたら、そのこと自体を評価されるようになった。継続が信用に変わったんですね。そこで辛抱できたから、のちに美波町に本社を移転して、事業が軌道に乗るようになった。

山田 だから、何事も続けることだと。たしかに量が質に転化する瞬間ってありますよね。私も「〇〇なのだ」と名前をつけられるなら何をやってもいいnanodaという企画を、時間外で続けていて。

 

吉田 さっきの「お掃除なのだ」もそのひとつですよね。「ぐるぐるカレーなのだ」とか「広島東洋カープなのだ」とか「カンバンなのだ」とか、ホンマに何でもやってらっしゃる(笑)。

山田 もう400回はやっています。最初の頃は、周囲からものすごく奇異な目で見られたんです。変人扱い。ところが、7年も続けていると、「この人、辛抱強いな。意外とまじめなんじゃないの?」と評価が一変した(笑)。

吉田 そういう現象のことを、僕は「素敵な副作用」って呼んでいます。行動してみたら、始める前には予想もできなかったことが起こる。

山田 大企業の人材育成プログラムとして塩尻市の地域課題解決に取り組んでもらうMICHIKARAでも、素敵な副作用がありしたよ。最終日に全チームが市長の前で政策提案するんですけど、実際に予算化されるのは3割しかない。すると、SBイノベンチャーが「残りの7割のほうのテーマを教えてくれ」って。なんと失敗事例のほうに食いついてきた。

吉田 地方課題の解決がビジネスになりうると判断したわけですね。でも、失敗事例をちゃんと公表する勇気があったからこそ、素敵な副作用が生まれたとも言える。そのへん塩尻市はさすがだなと思う。

ピボットの軸足を決めろ

山田 誰も答えをもってないから、地方創生のポイントは「続けること」にあると思うんです。国が地方創生に予算をつけ続けてくれることは決まった。あとは現場の人間が続けられる環境を、いかにして用意していくか。

吉田 そこがなかなか問題でね。山田さんは塩尻市のご出身だし、僕も都会に出たとはいえ実家が美波町にある。家族や親戚もいれば、先祖のお墓もある。要は、「そこにいる理由のある人間」なわけです。

でも、一方で、地域おこし協力隊のみなさんのように、そこにいなきゃいけない理由がない人だっている。自分の意思でその地域を選んだ人たちに、いかに活動を続けてもらうのか。

山田 私がよく言うのは、「ピボットの軸足を決めろ」ということですね。私の場合、公務員を続けているから、時間外で好き勝手にできる面が大きい。公務員じゃないほうの足は、自由自在にピボットできるわけです。軸足をきっちり作ることで、さまざまなチャレンジが可能になる。