混沌の香港デモ、その先に待ち受ける「中国政府が描く驚きの未来図」

そして人民解放軍が台湾になだれ込む…
近藤 大介 プロフィール

香港だけを特別扱いはしない

――「香港不要論」については、今年5月から6月にかけて深圳を訪問した際にも、深圳人たちがしきりに口にしていた。例えば、「香港国際空港の昨年の利用者が世界8位で、深圳宝安国際空港の利用者が22位というのは、北京政府と香港特別行政庁の『密約』によって、深圳国際空港を拡大しないからであり、不便で仕方ない」と怨嗟の声が上がっていた。

「その通りだ。香港行政庁の幹部たちが北京へ来るたびに、『深圳宝安国際空港を拡張しないでほしい』と陳情する。いまや中国大陸からの観光客の多くが、ただ香港国際空港を利用するためだけに香港へ入るからだ。

だが8月9日から13日まで、5日連続で起こった香港国際空港での動乱によって、われわれもはっきりと方針を変えた。もう香港に対して遠慮はしない。

8月18日、国務院(中央官庁)は、『深圳の中国の特色ある社会主義先行示範区建設を支持することについての意見』を発表した。内容は、2025年までに深圳を世界トップクラスの国際イノベーション都市にする、2035年までに世界に影響力を持つイノベーション先端都市にする、今世紀半ばまでに世界に屹立する世界最先端の都市にするというものだ。これこそ、『深圳を香港に代替させる』という宣言に他ならない。

すでに昨年10月、約9年の工事期間を経て、『港珠澳大橋』が開通した。広東省珠海市と香港のランタオ島、マカオの3ヵ所を結ぶ世界最長55㎞の海上大橋だ。昨年10月23日に珠海で行われた大橋の開通式には、習近平主席も出席し、『広東省、香港、マカオを一体化した発展を加速させる』と述べた。要は『今後は香港を広東省の一部として取り込んでいく』ということだ。

また、昨年9月23日には、中国の高速鉄道(新幹線)が香港まで伸長された。広深港高速鉄道の全面開通で、これによって北京と香港は8時間56分で直接結ばれた。

これらすべては、まさに『香港と広東省の一体化』を進めるための措置だ。すなわち、今後は香港だけを特別扱いはしないということだ」

〔PHOTO〕gettyimages

――新華社通信やCCTV(中央ラジオテレビ総台)の報道によれば、8月29日から31日まで、習近平主席の片腕である王岐山副主席が急遽、広東省を視察した。それらの報道によれば、中山大学、広州美術学院、広東中医薬博物館など、歴史文化哲学などの施設を視察したという。だが、本当の目的は香港問題への対処だったのではないか?

「新華社通信は、『中国共産党政治局委員で広東省党委書記の李希(習近平主席の忠実なしもべとして知られる)が帯同し、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を貫徹する学習を行った』と報じているではないか。すなわち、香港の動乱を広東省に持ち込ませないよう釘を刺すと同時に、香港行政庁にもプレッシャーになっただろう」

 

台湾は「東アジアのクリミア」になる

――習近平主席は今年1月2日、人民大会堂で「台湾同胞に告げる書40周年記念式典」を開き、香港方式の「一国二制度」での台湾統一を強調した。だが今後、人民武装警察を香港に突入させた場合、台湾がますます香港方式の「一国二制度」を拒絶するのは明白だ。来年1月の台湾総統選挙でも、台湾独立を志向する蔡英文総統の再選を後押しするだろう。

こうしたことは、台湾統一を目指す中国にとって、大きくマイナスに作用するのではないか?

「今夏、わが党と政府は、長年の幻想から目覚めた。すなわち、もはや『一国二制度』による台湾統一は放棄し、『一国一制度』によって行うということだ。

だから蔡英文が再選され、『台湾独立』を叫ぶがよい。その瞬間に、人民解放軍が台湾に突入するだろう。台湾は『東アジアのクリミア』になる。中国共産党創建100周年(2021年7月)までに台湾を統一できれば、こんなに喜ばしいことはない」

本文でも述べましたが、香港問題に直結した米中対立の最前線を追っています。ご高覧ください!