混沌の香港デモ、その先に待ち受ける「中国政府が描く驚きの未来図」

そして人民解放軍が台湾になだれ込む…
近藤 大介 プロフィール

「一国二制度」は終焉を迎える

――中国は、隣の深圳に集結させた人民武装警察を、香港に繰り出す具体的な計画を立てているのか。もうしそうだとしたら、それはいつ頃になるのか。

「重ねて言うが、香港は中華人民共和国の一部の特別行政区だ。特別行政区の警察で対処できない場合には、特別行政区からの要請を受けて、人民武装警察が鎮圧することになるのは当然の話だ。

人民武装警察が入る時期は、香港行政庁の要請がいつ来るかによるが、少なくとも10月1日の建国70周年の記念式典が終わった後になる。それまでは、70周年行事をつつがなく終えることに集中するからだ」

――10月1日の後にせよ、もしも人民武装警察が境界を越えて鎮圧に乗り出せば、1989年の天安門事件の再来となるリスクがある。

「そうはならない。30年前は、100万人を収容する天安門広場という公共の場所を、当時の学生たちが長期にわたって不法に占拠したため、それを人民解放軍が強制排除したものだった。

それに対して今回は、継続して不法占拠されている場所はないし、香港の街頭や空港などの破壊行為を取り締まるだけのことだ。デモを禁止して、公共の秩序を取り戻すための行動を取る」

――仮に人民武装警察が香港に突入した場合、その後の香港の状況はどのように変化するか?

「一言で言うなら、『一国二制度』は事実上、終焉するだろう。特別行政区の名は残すかもしれないが、740万香港市民に中華人民共和国の身分証を発行し、広東省の一部に組み込んでいく。

1984年に鄧小平同志とマーガレット・サッチャー英首相が中英共同声明を出し、1997年に香港を返還するが資本主義の制度は50年不変とした(香港特別行政区基本法第5条)。この取り決めが、そもそもの間違いだったという声が、最近北京で強まっているのだ。

1984年当時は、中国は改革開放政策に乗り出したばかりで、まだイギリスに抵抗するだけの国力を備えていなかった。だからとにかく香港返還を実現したかった。だがそんな約束をしたばかりに、今回の香港の暴動を許すことになった。『一国二制度』は、いまとなっては大いなる後悔だ」

――1997年当時は、中国と香港のGDP比は、5.4対1。つまり香港は、中国全体の2割近くの経済力を占めていた。かつ香港は、アジアの金融センターでもあった。そのため中国としても、香港返還後に「一国二制度」による恩恵を、十分受けたのではないか。

「それはその通りだ。だが恩恵ということでいうなら、香港も中国大陸から巨額のマネーや観光客が流入し、大いに潤った。

現在、香港証券取引所に上場している企業の半数以上が、いわゆる『大陸銘柄』だ。株式時価総額で世界8位(2019年8月現在)のテンセントも、スマホの世界シェア4位(2018年)のシャオミー(小米)も、アメリカ市場ではなく香港市場に上場している。世界7位のアリババも現在、香港での上場を検討中だ。

観光客に関して言えば、昨年、香港を訪れた域外の観光客は、前年比11.4%増の6510万人。そのうち全体の78%を占めたのが、中国大陸からの観光客で、前年比14.8%増の5100万人だった」

 

――そのように相互に利用し合ってきた関係が、「一国二制度」の崩壊とともに崩れてしまうのではないか。

「それはある意味、仕方のないことだ。われわれとしては、秩序の維持が最優先だ。

いま北京で起こっているのは、むしろ『香港不要論』だ。アジアの金融センターとしての地位は、2016年6月にイギリスがBrexit(EUからの離脱)を決めた時点で、すでに終わったに等しい。ロンドンのシティという『親分』あっての『子分』(香港)だったわけで、親分が揺らいでいる現在、上海か深圳が香港の肩代わりをすればよい。

実際、昨年のGDPで香港は中国全土の2.7%にすぎず、ついに隣の深圳にも抜かれてしまった。人口で言うなら、香港は中国で35番目の都市だ。いまや香港が中国を必要としているのであって、その逆ではない」