混沌の香港デモ、その先に待ち受ける「中国政府が描く驚きの未来図」

そして人民解放軍が台湾になだれ込む…
近藤 大介 プロフィール

――普通選挙の実現、特に行政長官(香港トップ)の民主的な選出については、1997年の香港返還時に、将来的に保証したものではなかったのか。

返還時に施行された香港特別行政区基本法の第45条では、行政長官の選出方法について、普通選挙に移行していくという「目標」が明記されている。また附則の第7項では、「2007年以降は行政長官の選出方法を改修する必要がある場合は、立法会(議会)全体議員3分の2以上を通過し、行政長官が合意し、全国人民代表大会常務委員会の批准を得なければならない」としている。

こうしたことから、香港市民は2007年の行政長官選挙で普通選挙を期待したが、そうはならなかった。それどころか、習近平政権が発足した翌年の2014年8月31日、北京の全国人民代表大会常務委員会は、2017年の第4代行政長官選挙は事実上、北京政府のお墨付きを得た候補者たちによる間接選挙にすると、一方的に決めてしまった。

この決定に怒った香港の若者たちは、同年秋、79日に及ぶ「雨傘革命」を起こしたが、最後は警察に鎮圧された。その後、2017年7月の返還20周年の時は、習近平主席が香港に乗り込んで、軍事パレードまで行って、香港市民を威圧した。

だが今回は、すでに雨傘革命の日数を超えており、しかも一向に収まる気配を見せない。こうした広範な香港市民の「民意」を、中国政府はどう捉えているのか?

「香港市民が行政長官を、完全な普通選挙で選ぶと考えているのだとしたら、それは大いなる誤解というものだ。香港特別行政区基本法の第5条で、『資本主義の制度と生活方式を50年変えない』としているのは事実だが、『行政長官を普通選挙で選出する』とは書いていない。また第23条では、国家への謀反、分裂、反乱煽動、転覆行為などを禁じている。

要は、董建華(とう・けんか)初代行政長官(在任は1997年~2005年)が再三述べているように、『一国あっての二制度』なのだ。すなわち、香港はすでに中国に返還されたのだから、中国のルールに従ってもらう。ただし中国が許容する範囲内での『資本主義』は認めるということだ」

 

デモ隊はアメリカの駒にすぎない

――9月8日に行われたデモでは、アメリカ議会に「香港人権民主主義法案」(Hong Kong Human Rights and Democracy Act)の可決を求めた。これは今年6月13日に、マルコ・ルビオ議員とクリス・スミス議員(共に共和党)が提出した法案で、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)らも推進派だ。香港の自治や自由、人権を毎年監視し、それらを損ねる当局者をアメリカが拒絶する法案だ。

8日のデモでは、若者たちがアメリカ国旗を振り上げたり、「USA」「ペロシ」のコールが起こったりした。そしてデモ隊は、香港のアメリカ総領事館前で職員に、法案を早期成立させるよう求めた請願書を手渡した。こうした動きをどう見るか?

「デモ隊が、ついに馬脚を現した。すなわち、6月からの一連のデモは、アメリカが香港市民を煽動して行っていたことを証明したようなものだ。

われわれは6月以来のデモを、単純な香港市民の要求とは見ていない。中国とアメリカの『第一列島線』(中国が呼ぶ日本列島、台湾、フィリピン、大スンダ列島を結ぶ南北の線)を巡る長期にわたる攻防の、一断面と捉えている。

われわれの調査によると、デモを行っている若者たちの多くが、アメリカのバックアップを受けていて、バイト代までもらっている。アメリカは自ら陰謀を仕掛けておいて、中国に内政干渉するおかしな法案まで作ろうというのだから、呆れたものだ」

〔PHOTO〕gettyimages

――米中の攻防と香港デモとの関係について、中国の考えを、もう少し詳しく説明してほしい。

「周知のように、アメリカ側の不当な『攻撃』によって、中米間の対立が激しさを増している。われわれはアメリカとの対立を、4段階で考えている。第一段階が貿易戦争で、これは昨夏から始まり、9月1日にはついに『第4弾』が放たれた。このままエスカレートしていけば、中米双方がすべての互いの輸入品に30%の関税をかけ合うという最悪の事態に陥るだろう。

第二段階はハイテク戦争で、アメリカはわが国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)などに不当な制裁をかけている。これから始まる5G(第5世代無線通信システム)時代を、『中国の時代』にしたくないのだ。

第三段階は金融戦争で、ドナルド・トランプ政権は8月5日、中国を為替操作国に認定した。中国は、アメリカ財務省が定めた為替操作国の3条件のうち一つしか該当しておらず、アメリカ財務省自身が5月に、『中国は為替操作国ではない』と報告しているにもかかわらずだ。

こうなるともはや、いつ第四段階の武力衝突に至るかということになってくる。最も敏感な台湾では、来年1月に『総統』選挙が行われ、ますますホットスポットになっていくだろう。それを見越して、アメリカ国務省は8月20日、台湾にF16戦闘機66機を80億ドルで売却する承認をしたではないか。

中国もアメリカもすでに、第一列島線付近で局地的な武力衝突が起こることを覚悟し始めているのだ。すでに9月3日、習近平主席が中央党校(国家行政学院)の開校式(入学式)のスピーチで、述べた通りだ(新華社通信の報道によれば、習主席は共産党の幹部候補生たちを前に、42回も「闘争」を連呼した)。

そしてそんな中で、アメリカ側が仕掛けたのが香港の動乱だということだ。アメリカは、中国大陸内で動乱を煽動する力がないから、香港で起こしているのだ。街頭で拳を振り上げている若者たちは、アメリカの駒にすぎない」