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出版不況でも小学館の雑誌「幼稚園」がバカ売れするヒミツ

商品の「真の顧客」を考える
古田 拓也 プロフィール

差別化しにくい市場の競争戦略

幼児向け雑誌でターゲットに刺さるコンテンツとして通常イメージするものは、幼児向けアニメのキャラグッズの紹介や、乗り物といった企画ではないでしょうか。

 

しかし、他世代と比較して多様な嗜好が発生しづらい幼児向けの雑誌は、必然的にコンテンツの質や内容も同質化し、差別化要因が少なくなってしまう懸念があります。

このような市場環境においては、主に2つの競争戦略が考えられます。

第1に考えられるのは、独占的にコンテンツを使用する機会を確保することです。

これはスポーツ中継を例に例えるとわかりやすいでしょう。

スポーツ中継におけるコンテンツの主体はスポーツ選手です。そのため、基本的にはどのテレビ局が放送しても、スポーツ中継の質や内容が大きく変わることはないでしょう。

そこで、テレビ局は独占的に特定の放送が可能となる「放映権」という権利を大会の運営元等から購入することがあります。

コンテンツを自社で囲い込むことで他社との障壁を作り、差別化要因を作り上げるのです。

これを幼児向け雑誌について考えると、取り扱うアニメキャラクターの版権を購入することで、他社に同じキャラクターを使わせないといった参入障壁を作ることはできそうです。

しかし、この手法はパイの奪い合いとなり、市場全体の拡大という観点で有効な手段ではありません。

第2に、ターゲティングを変えるという方法が考えられます。

この戦略を取るメリットは、対象となる人口が増える分、市場規模が増加し、売上の向上が見込めることです。

一方で、ターゲットの増加により、情報の希薄化が生じ、これまでのコアなファン層が離れるというデメリットも考えられます。

たとえば、男性専用だったファッション雑誌を、女性にも読んでもらうために、内容の半分を女性向けにしたような場合を考えてみてください。

たしかに市場規模は単純計算で倍になるかもしれません。

しかし、少なくとも内容の半分程度が読者に最適なコンテンツでなくなってしまいます。読者からは中途半端な雑誌とみなされ、男性と女性のどちらからも読まれなくなってしまうでしょう。

ターゲティングを変更するうえでは、競争相手やターゲットの行動を加味した慎重な判断が必要となるのです。