しかしそれには理由があります。フランスの女性の就業率は80〜85%以上だと言われています。ほとんどの方がお仕事をされているのですね。フランス語で「engagé」と言う言葉があります。積極的に参加すること、という意味ですが、特に政治、社会参画することの意味合いが強いようです。主婦の方も積極的に社会活動をされる方が多く、とにかく時間がない。

取材先の女性に聞いたのです。「栄養バランス心配じゃないですか?」と。こう返されました「家で料理を作ってばかりだとわたし自身が輝かないじゃない。わたしが輝いてこそ家族が輝くのよ!」と。……な、なるほど。

基本的に、「家族が、人が、社会が幸せになるには、まず自分自身が幸せにならないと」という考えがみなさんの根底にあり、だからこそ日々のごはん作りに対して決して無理しない。だからこそできる範囲で家族やパートナーで協力し合い、ごはんを作って食べる。その姿がとても印象的でした。

世界の家庭料理はいい意味で「質素」

世界の家庭料理はどちらかというと質素で、毎日同じようなものを召し上がります。

ポルトガルは干し鱈。

ドイツでは、ジャガイモと豚肉料理。

デンマークはシンプルなオーブン料理。

スリランカは全てスパイス料理。出来合いのお惣菜や作り置きがほとんど。

すべて美味しいその国々の伝統的な料理ですが、かなりシンプルです。日本の家庭料理は品数が多いうえ、和食をベースにハンバーグなどの洋食、餃子などの中華、パスタなどのイタリアン、スパイシーなインド料理やアジア風の料理など、ワールドワイドな料理が展開されます。それに副菜に汁物……世界中旅をしましたが、そんな国は日本だけかもしれません。食が豊かな証拠ではありますが、料理をつくる側としては、いろんなバリエーションを用意しないといけないのでプレッシャーがかかるうえ、負担があまりに大きすぎます。