NHK『だから私は推しました』が描く「地下アイドルのリアル」

『あまちゃん』もアイドル物語だった
碓井 広義 プロフィール

ドラマとして可視化された「アイドルビジネス」

アキとユイは、本格的アイドルを目指して上京することを決める。ところが直前になってユイの父親が倒れ、アキは1人で東京へ行き、アイドルユニット「GMT47」に入る。

「AKB48」のAKBが「秋葉原」の略であるように、このGMTは「地元(じもと)」の意味である。プロデューサーの荒巻太一(古田新太、怪演!)が全国の都道府県から1人ずつ地元アイドルを集め、グループアイドルとして売り出そうとしていたのだ。しかし、まだ47人は揃っておらず、現状はアキを入れて6人のユニット「GMT6」だった。

ちにみに、このGMT6のメンバーの一人、埼玉出身の入間しおりを演じて強い印象を残したのが、松岡茉優だ。

GMT6は、すでに稼働していた「アメ横女学園(以下、アメ女)」の下位に置かれるグループだった。このアメ女の設定によって、『あまちゃん』は、いわゆる「アイドルビジネス」の仕組みを視聴者に見せていくことになる。

朝ドラはもちろん、民放のドラマでも触れられることのなかった領域だ。『あまちゃん』における“現実の取り込み”の一つである。

 

「グループアイドル」というシステム

アメ女のモデルは、明らかに実在の人気アイドルグループであるAKB48だ。ドラマの中で行われるアメ女に関する説明は、ほぼAKB48に準ずると考えていい。

まず、アメ女は上野に専用の劇場「東京EDOシアター」を持っている。これは秋葉原の「AKB48劇場」と同じスタイルであり、「会いに行けるアイドル」はアメ女にとっても重要なコンセプトだ。

次が階級制度である。アメ女のメンバーは、センターを頂点とする人気の順に「レギュラー」「リザーブ」「ビヨンド」「ビンテージ(卒業したOG)」と分けられていた。GMT6のメンバーはその下に位置するシャドー(代役)である。こうしたピラミッド型のヒエラルキーも、そのままAKB48にも当てはまる。

また、プロデューサーの荒巻は、このピラミッドに並ぶメンバーの入れ替えを、「国民投票」という名のファン投票によって実施する。これはAKB48における「選抜総選挙」に相当するものだ。選ばれた上位陣が新しいシングル曲に参加できるシステムもAKB48と変わらない。

注目すべきは、こうした「階級制」や「選抜制」の仕組みを『あまちゃん』の中で描くこと自体が、秋元康プロデューサーがAKBグループで展開してきたリアルな「アイドルビジネス」に対する、秀逸な「批評」となっていたことだ。これもまた、過去のドラマにはない果敢な挑戦だった。

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