NHK『だから私は推しました』が描く「地下アイドルのリアル」

『あまちゃん』もアイドル物語だった
碓井 広義 プロフィール

「人を元気にする」のがアイドルの仕事

このドラマの中では、2008年の夏に、ヒロインのアキこと天野秋(演じたのは能年玲奈、現在は「のん」)は、24年ぶりに帰郷する母・春子(小泉今日子)に連れられて、過疎地域である北三陸へとやって来た。祖母・夏(宮本信子)が住む春子の実家で、高校2年の夏休みを過ごすためだ。

この時、春子には思惑があった。一つは、地味で暗い性格であり、学校でも軽いいじめを受けていたアキを、違った環境に置いてみたかったこと。もう一つは、夫である黒川正宗(尾美としのり)の神経質な性格が我慢できず、離婚を決意していたことである。

春子の母・夏は海女であり、かつて春子を跡継ぎにしようとして拒否された経緯がある。アキは偶然海に飛び込んだことで海女に興味を持ち、その見習いとなった。

 

北三陸の観光協会や北三陸鉄道の人たちは、過疎化対策、また地域振興を目的に、「ミス北鉄」コンテストを実施する。ミスに選ばれたのは地元で評判の美少女・ユイ(橋本愛)だ。このユイと海女のアキが、地元アイドル「潮騒のメモリーズ」を結成する。

2人が北鉄でウニ丼を売ったり、お座敷列車で歌ったりする活動はネットで流され、全国からファンが集まってくる。その人気に火がつくきっかけが、観光協会のサイトに置かれた2人の「動画」だという筋立ては、極めて現代的かつリアルなものだった。

またこのドラマでは、アキたち地元アイドルを軸に、大人たちが「町おこし」や「地域活性化」を図ろうとする展開の中で、全国各地の市町村が実際に抱えている諸問題を浮き彫りにしていた。地域の過疎化、住民の高齢化、シャッター商店街、若者の雇用問題などだ。

こうした社会的テーマや課題を、朝ドラが取り込んでいること自体が当時は珍しいことであり、挑戦的な試みだったのだ。

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