興味を育てる授業で評判となり、『情熱大陸』でも取り上げられて話題の塾「探究学舎」(東京都三鷹市)。ここで4月から講師を務めている森田太郎さん(42)は元公立の小学校教師。大学時に紛争直後のボスニア・ヘルツェゴビナでサッカーによる民族融和を目指し少年サッカークラブを立ち上げ、サッカー日本代表のイビチャ・オシム元監督とも親交の深い異色の教育者です。

自身が小学生の時は宿題を一切やらなかったという森田さん、教師になって「宿題をさせなければならない立場」になったときにとった手法は「子どもたちが自分から宿題をやる環境づくり」でした。森田さんの「子どもが自分からやりたくなる環境づくり」により、子どもたちがみるみるやる気を出し、「型破り」と呼ばれる話題の教師になっていったのです。

今回はそんな森田さんが公立小学校の現場で感じた「日本教育への危機感」を伝えてもらいます。

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2015年、かつてのクリロの選手らが集まったスタディツアー。ムスリム、クロアチア、セルビア、そして日本人と民族が融合。森田さんは毎年のように彼らと会う機会を設けている 写真提供/森田太郎

学校に楽しんで行こうとする素晴らしさ

ぼくには中学1年生になる娘がいますが、中学の先生たちも大変だなあと思う出来事がありました。夏休み前に催された保護者会へ参加したときです。
 
担任の先生から「テストの見直しが大事です。のちのち困るのは子どもなので、ここでしっかり学習習慣をつけてください」と言われました。
そこでいただいたのが、テスト後の「振り返りレベル1・2・3」というステップが書かれてある冊子です。

「反省レベル1」は、テストをファイルに貼る。2間違えたところを復習する、といった具合に取り組むべき順番が書かれています。そのような冊子を作るだけでも大変だっただろうなあと、先生たちの苦労を思いました。

その後の、保護者ひとりひとりが所感を述べるコーナーで、ぼくはこんな話をしました。
 
「中学に行って娘の何が変わったかと言うと、毎日の部活動がとても楽しそうです。バレーボール部に入って、バレーへの興味がどんどん増しているようです。土日は家族の時間を楽しみたいのですが、娘だけ部活があるからとひとりで出かけて行きます。巣立っていった感じです。

ぼくは転職して月曜日が休みになったので、お父さんは明日釣りに行くけれどどうする? と4人の子どもたちに言うと、彼らは学校と釣りを天秤にかけて悩みます。その姿を見るだけで楽しいです。小学生の息子は、こないだ休んだから今回は休めないなあと苦悩の表情を浮かべていますが、娘は基本的に学校を選びます。これはこの学校が楽しい、教室で友達といることが楽しいという証しだと思います」

聞いていたお母さんたちは、驚いたような表情を浮かべ、ぼくを見つめていました。よもや、親が学校を休むことを肯定しているなんて想像もできませんし、ちょっと前まで公立学校の先生だった人の発言だとは到底信じられないっていう感じでした。 ただ、ぼくが強調しておいたのは、親が決めるのではなく、子どもが選択できることが大切だということです。

楽しい、と思えるということは、楽しいと感じられるこころの余裕があるということです。