# 経済・ビジネス

ビッグデータが威力を発揮するのは、生身の人間がいればこそ

参院選予測は的中率96%だった
安宅 和人

ビッグデータレポートチームは、日頃からヤフーでデータの分析や調査に携わる人々のうち、このレポートの趣旨に共感してくれる有志のメンバーによって構成されている。

いずれも日本を代表するといっても過言ではないデータのスペシャリストだが、それぞれのメンバーの経歴やスキル、関心領域は様々だ。

東大の博士号を取得した、位置情報データの扱いを得意とする「位置情報(ロケーション)ドクター」もいれば、元雑誌編集者として、人間の気持ちや感情をデータから明らかにしようと試みる「こころ掘り下げ人」もいる。経済系の分析を担当していたある女性は、自身が妊娠・出産を経験したのち、その経験を生かしたいと「育児シリーズ」を立ち上げて、「キラキラデータママ」と化した。

 

『ビッグデータ探偵団』の各レポートでは、その作成を担当したメンバーにも登場してもらった。彼/彼女らがレポートをいかなる経緯で着想し、作成に当たってどのような思いを込めたのか、レポートの背景にある作成者の人間味や情熱も、感じ取ってほしい。

このメンバーが結集しなかったならば、データの面白さやパワーを存分にはお伝えできなかった。逆に言うと、彼/彼女らが最先端の知やアイデアを出しあったからこそ、中学・高校生でもすんなり理解できる、楽しくて役に立つ読み物になったと自負している。

これから皆さんにお届けする、言わば「データ分析の梁山泊」の特産品を、ぜひ最後まで味わっていただきたい。

ネットとリアルは切り離しえない

もうひとつだけ、最後に述べておきたい。

ヤフーがビッグデータを扱う企業である以上、データの価値を世の中に発信し、伝えていくことは、私たちの大きな課題なのではないか――そんな思いを抱くなかで、ちょうど同じ頃に、私が懸念していた問題がある。

それが、インターネットの世界とリアルの世界を別のものとみなす世の中の風潮であった。ネットの空間は、あたかもそれ自体で完結する閉ざされた世界として独立しており、現実の私たちの生活とは関係ない――そんな考えが蔓延していたのだ。

しかし、それが誤ったものであることは明らかである。世界は今、急速な情報産業革命の真っ只中にある。「IT企業」という言葉があるように、これまで「ICT(information, communication, and technology)産業」とは特定の一部の産業を指すものと考えられてきた。しかし今後は、すべての産業が「データ×AI化」していく。人類最古の産業のひとつとされる農業を含め、一切の例外はない。

農業など全ての産業が「データ×AI化」していく(photo by iStock)

ネットとリアルは別個の世界であるどころか、切り離しえないものであり、今後ますますその連関が密接なものとなっていくことは間違いない。

このような時代に生きる人々にとって、変革のカギとなるデータについての皮膚感覚的な理解が欠如していることは、致命的と言わざるを得ない。データを正しく理解する力(=データ・リテラシー)は、リアルな現実世界を生きていくうえで、もはや「常識」として身に着けておくべき必須のツールとなる。

データを分析し、意思決定に役立てていく「データ・ドリブン」の思考力、分析力、情報科学の基本、データの力を解き放つ力――これらをしっかりと会得し、応用できる人だけが、これからの社会を生き抜いていけるのだ。

以上、少々堅苦しい話も交えてしまったが、ビッグデータレポートの最大の目的は、可能な限り多くの人々に、「データとはこんなに面白くて、パワーがあって、すばらしいものなんだ!」と実感してもらうことにある。ぜひ、気軽に楽しみながら、ページをめくっていってほしい。データの魅力と無限の可能性を体感してもらえれば、本望である。

(『ビッグデータ探偵団』「はじめに」より)

『ビッグデータ探偵団』目次                      第1部 ビッグデータは、「深層」を描き出す
1-1 新社会人は4月に「モットーとは」、5月に「新入社員 辞めたい」、6月に「恋活」と検索する
1-2 ママは、生後102日目にわが子をモデルへ応募したくなる
1-3 「頭が痛い日本人」が最も多い時刻は、17時である
1-4 矢沢永吉と郷ひろみは、双子レベルの「そっくりさん」
1-5 日本は、「東京」と「それ以外」の2つの国からできている

幕間劇1-6 音楽CDが売れる時、サバの漁獲量が増える――擬似相関とは何か?

第2部 ビッグデータは、こんなに役立つ
2-1これからの「混雑ぶり」がわかり、移動のストレスが消える
2-2 救援活動をスムーズに進める、「隠れ避難所」を探せ!
2-3 リニアで日本はどれだけ狭くなるのかを、実際に見てみよう
2-4 政治への関心が薄い日本人の注目を一挙に集めた、「令和」発表の瞬間
2-5 検索量を分析すると、選挙の議席数予測は96%も的中する
2-6 今の景気を予測することは、どこまで可能か?