# 経済・ビジネス

ビッグデータが威力を発揮するのは、生身の人間がいればこそ

参院選予測は的中率96%だった
安宅 和人

政治・経済分野からスタートした「ビッグデータレポート」であるが、その後も様々なテーマにチャレンジしてきた。妊娠・出産を控えた女性の悩みを解決するもの、熊本地震のデータから作成した災害対策を目的とするもの、都道府県別の交通利便性の把握や未来の混雑情報の予測を目指すもの。

 

もう少しやわらかいテーマだと、日本の音楽の歌詞の特徴を分析するものであったり、一見、データとは程遠いものに思える、新入社員の悩みなどを明らかにしたレポートもある。

『ビッグデータ探偵団』本文より

また、ウェブ公開後に話題となった「なんちゃって相関(擬似相関)」は、まったく関連性のない2つのデータがぴったり連動する様子を示すレポートだが、データを見る際の基礎知識である「相関」という概念を、楽しみながら理解できるような流れになっている。

このように公開したレポートのテーマは多岐にわたるが、レポートの作成にあたっては、このテーマ選びにかなりの時間とエネルギーを注いでいる。

チームメンバーで頭をしぼってネタの案をいくつも出し、面白くてインパクトがあるか、過度の手間がかかりすぎずに結果が出そうか、一般の人々にとってもわかりやすいか、主にその3条件を基準に、吟味して作成に取り掛かる。

『ビッグデータ探偵団』で紹介するレポートは多くの人にとって面白く、ためになるものであると自負している。

データの調理と「見える化」

データの面白さと強力さを伝えて、データに馴染み親しんでもらうことがビッグデータレポートの最善の目標だとするならば、そのうえで、もう一段階踏み込んだ、重要な影の課題がある。

それはズバリ、どれほど膨大な量のデータがあっても、データそれ自体からは意味を見出しにくいことを、しっかりと理解していただくことだ。

データとは素材であるに過ぎず、データがその価値や威力を発揮するか否かは、素材をどのように調理するか――データの世界の用語で言うならば、いかに目的を持ったうえで解析、精査、分析、分類、抽出するか――にかかっている。

その次の段階でもうひとつカギとなるのは、「見える化(可視化)」という問題だ。「データを解析した結果、こんなことが判明した」、と新たな発見を得られたとしよう。その結果を多くの人々に伝えるためには、誰もが、見た瞬間にパッと意味を理解できる表現によって示さなくてはならない。

解析結果を、誰でもわかるようにするには(photo by iStock)

その手法は様々であり、簡単な表現方法として表やグラフで図示することもあれば、アニメーションにすることで時間の経過を示す場合もある。もっと高度な技術を使ってバーチャルに表現することもできる。

どのように見せ、伝えるのが最も効果的であるか――このようなデータの可視化は、欧米では「大量データ可視化(Data Visualization)」と呼ばれているが、日本ではまだ十分に発展しておらず、その重要性も浸透していないのが現状である。

これについては、『ビッグデータ探偵団』の章「リニアで日本はどれだけ狭くなるのかを、実際に見てみよう」で実際に詳しくお見せする。

個性あふれる生身の人間の力

ここまでの話から、私たちが真にお伝えしたいことが、お分かりいただけただろうか?

それは、ビッグデータがその本来の価値を発揮するためには、生身の人間の力が不可欠ということである。膨大なデータを解析し、処理するにあたっては、当然ながらコンピュータやAIの力を借りる必要がある。

だが、それをどのように活用するかを考えるのも、その決断を下すのも、人間だ。データの力とAIの力を解き放ったあと、最終的に必要となるのは、生身の人間の感じる力、決める力、伝える力である。

そんなわけで、矛盾しているように思われるかもしれないが、テクノロジーが進化し、AIやデータが当たり前に使われるようになるこれからの時代においてこそ、データを使う人間自身の生の体験や考え方こそが、重要となってくるのである。