# 空き家

相続した人を困らせる「実家の空き家」問題の本質

ふたりの「再生人」が語る
山田 崇, 吉田 基晴

100人いたら100通りの移住計画

山田 空き家問題と一括りにしてしまうと、見えなくなってしまうものがある。そりゃ、そうですよね。一人ひとり、興味も関心も困りごとも違うんだから。

吉田 ある人にとったら心の負荷で、ある人にとったらすごいアセットなんです。だから、面倒くさがらず、一人ひとりの気持ちを汲み取る必要がある。

山田 私はいま地方創生推進課で移住定住促進も担当しているんですけど、先日、新機軸の企画を東京でやったんです。移住や田舎暮らしに関心のある若者25人が参加して、塩尻市役所の職員を中心に4人が出向いた。一人ひとりの関心に合わせて、3年以内に塩尻ツアーや移住体験をやります。そのときは必ずこの4人のうち誰かがアテンドしますと。

 

吉田 あ、いいですね。僕は美波町の移住担当でも何でもないんだけど、希望者が来たときは、それぞれの関心に合わせて案内しますよ。100人いたら、100通りのプランを作って。でも、それをやっている公務員はそう多くない。

山田 私たちもやる前は少し心配でした。25通りのカスタマイズなんて負担が大きすぎるんじゃないかと。でも、一人の女性から「塩尻産のワインを現地の人と一緒に飲みたい」という声が出たとき、「私も」「私も」って、何人かが手を挙げた。「そうか。ポイントは、どうカテゴライズしていくかなんだな」と気づいて。

吉田 いまはテクノロジーが発達して、いろんなツールが出てきている。人の関心をまとめるのは楽になったと思いますよ。

山田 日本酒を作っている人に会いたいとか、蕎麦を打っている人に会いたいとか、レタス農家に会いたいとかいうのは、みんな「生産者と交流したい」ってカテゴライズしていけますしね。工夫次第で効率化できる。

吉田 目の前の一人を大切にする――。まさに元ナンパ師の本領発揮ですねえ。

山田 だって、渋谷センター街にいる女の子全員と飲みたいと願ったとして、目の前の一人と誠実に向き合うことの積み重ねでしか実現できないですから。移住定住も同じだと思うんです。

<つづく>

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山田 崇(やまだ・たかし)
1975年長野県塩尻市生まれ。千葉大学工学部応用化学科卒業。現在、塩尻市役所 企画政策部 地方創生推進課 地方創生推進課係長(シティプロモーション担当)。空き家プロジェクトnanoda代表、信州大学ローカルイノベーター養成コース特別講師/地域ブランド実践ゼミ、内閣府地域活性化伝道師なども務める。
著書に『日本一おかしな公務員』(日本経済新聞出版社)

吉田 基晴(よしだ・もとはる)
1971年徳島県海部郡美波町生まれ。神戸市外国語大学卒業後、複数のITベンチャー勤務を経て2003年セキュリティソフトの開発販売を手がけるサイファー・テック株式会社設立に参画し、後に代表取締役就任。新たなワークスタイルの実現と採用力の強化を目的に2012年徳島県美波町にサテライトオフィス「美波Lab」を開設し、翌年には本社も移転。2013年6月に株式会社あわえを設立、同代表取締役就任。自らの体験を活かし、行政や地域住民と共に企業・起業誘致や定住支援をはじめとした地域振興事業に取り組む中で、2016年より美波町参与を拝命。2018年からは県南部1市4町からなる徳島南部地域DMO代表副理事もつとめている。著書に『本社は田舎に限る』(講談社+α新書)がある。