# 空き家

相続した人を困らせる「実家の空き家」問題の本質

ふたりの「再生人」が語る
山田 崇, 吉田 基晴

問題視されることが問題なのだ

吉田 大家さんが心配されているのって、台風が来たときに空き家の瓦が飛んで、ご近所に迷惑をかけるんじゃないかとか、そっちなんですよね。田舎特有の気苦労というか。世に言われる「空き家問題」とはちょっと違う。

山田 おじいちゃんが亡くなって、おばあちゃんが家を相続したとか、受け身で大家さんになった人が多いからだと思います。地方だと、家もたいした資産にならないし、そんなに生活に困っているわけでもない。だから、「この家をどう活用しようか」という焦りがない。「どうしたもんかなあ」と、呆然としているだけなんです。

吉田 わかる、わかる。「草刈りに行かなあかんけど、しんどいから行けてない。ご近所に迷惑かけてるんと違うかなあ」ぐらいで。こういうのってね、自分で体験した人にしかわからない。机の上で考えている人たちからは「空き家って、どこが問題なのかな?」なんて疑問が出てこないもの。

 

山田 大家さんはお年寄りが多いから、たしかに掃除は大変なんですよ。きれいにしていないことを心苦しく感じている。内見をお願いすると、みなさん「汚いので、土足のまま上がって」とおっしゃる。掃除していないので、正直、見られたくないんですよ。ところが、行政の職員がわざわざノックして調べにくる(笑)。

吉田 「空き家は問題だ!」と大騒ぎして、根掘り葉掘り聞きにくることが、おじいちゃんおばあちゃんにとっての「空き家問題」なんだよなあ(笑)。

山田 だから、大家さんにとって最大の問題は掃除なのだろうと考え、「お掃除なのだ」というイベントを始めました。商店街の空き店舗や空き家に押しかけて、お掃除させていただく。そのあと、大家さんの話をじっくり聞く。いまは地元の小学校の授業として、この活動は続いています。これが、私が体験を通して感じた空き家問題です。

先払いするからライザップは痩せる

吉田 いや、すばらしい取り組みだと思いますよ。でも、そうやって自腹を切って時間外に活動するとか、まずは動いてみるとかいう公務員がなかなかいないんですよね。統計だけ見て空き家問題を語る人と、山田さんのように実体験として空き家を語る人では、言葉の選び方からして変わってくる。

山田 自腹を切る意味って大きい。なぜライザップで痩せるのか? 先に40万円を支払うからだと思うんです。もとを取ろうと、頑張って痩せる。空き家も同じで、月2万円でも家賃を出していれば、「この家、どう使うのがいいんだろう?」って考えるようになる。新聞を読んでも空き家って文字にすぐ反応するようになって、「空き家って何なんだろう?」と深く考えるようにもなる。

吉田 やっぱりポイントは「見方を変える」ことだと思うんです。世間一般に言われていることが本当に正しいのか疑ってみる。

山田 目の前の人がいったい何を求めているのか、その都度、考える。でないと「経済産業省からお金が出るので、この制度を利用しませんか?」とか、単なるパッケージの営業になっちゃうんですよね。

吉田 見方を変えるという意味では、地域の外から来た人の観点も重要ですよね。田舎の古民家なんて、都会の人間には非常に魅力的ですから。僕は美波町では実家に住んでいるんですけど、古民家は2軒買いましたもん。そうしたら、それを聞きつけた人が次々と……。

山田 「吉田さんに頼めば、なんとかしてくれる」って(笑)。

吉田 宅建もってないのに不動産業者みたいに思われている(笑)。でも、そんな1軒を、UターンやIターンの若者たちがホテルに改装して。彼らからしたら「こんなええとこ、ホンマに僕らが使ってもいいんですか?」くらいの魅力がある。そこをどうマッチングするかなんですよね。