逃亡犯条例は撤回…香港デモ潜入で「負け戦」を見たかと思いきや

写真16枚が映し出す「現実」
西谷 格 プロフィール

過激なシーンを求めるメディアの群れ

日没後、デモは東へと進んだようで、追いかけて歩いていくと、十数台もの警察車両が待機しているのを見かけた。ものすごい威圧感だ。

さらに進むと、目抜通りの途中でバリケードが張られ、火の手が上がっているのを発見。その後10分程度で消防車が現れ、消火活動を開始。続いて後方から機動隊あるいは軍隊に近いレベルの極めて重厚な装備に身を包んだ警官たちが、隊列を組んで歩いてきた。バリケードの向こう側には、デモの後方と思しき人々がこちらと一定の距離を取って眺めていたが、警官が近づくと先のほうへ行ってしまった。

火の手が上がるデモ現場

バリケードを越えた警官隊は、行進しながら丸い透明な盾を警棒でバーン、バーンと叩き、デモ参加者を威嚇。一瞬、銃声かと思ってドキッとした。その後、何かの合図を機に突然走り始め、パン、パンと銃声を響かせた。威嚇射撃をしたのだろうか。一緒に走っていると、道端でうずくまるデモ参加者を抱きかかえる警官数人を発見。即座に、十数人のメディアがワーッと取り囲み、写真を撮りまくる。

デモ参加者を取り囲む十数人のメディア

この場面に限らず、デモの現場ではしばしばこうした小規模な“メディアスクラム”が起きがちだった。というのも、デモは基本的に参加者が漫然と動いているシーンが多い。小競り合いや逮捕、出血、発砲、破壊行為といったものがあると、どうしても注目したくなる。誤解を恐れずに言えば、“絵になる(写真映えする)”。その結果、ニュースではもっとも過激なシーンが流れることになる。

 

警官に抱えられたデモ参加者は、頭部からわずかに出血していた。逃走中に、どこかに頭をぶつけたのだろうか。傷を見つけた警察が何かを探すそぶりをすると、囲んでいた記者の一人が、ティッシュを何枚か差し出した。警官はデモ参加者を抱きかかえながら何か話しかけていたが、特に目立った傷がないことを確認すると、手錠をかけて車両へと連れて行った。

手錠をかけられるデモ参加者

同様に手錠をかけられた参加者は私が見た範囲で4〜5人いて、救急車のタンカに載せられて運ばれる者もいた。運ばれるときの表情は呆然としており、観念したような様子だった。香港警察によると、この日は159人を逮捕、241発の催涙弾と92発のゴム弾を使用したという。