# 人道援助 # 医療 # 国境なき医師団

「国境なき医師団」の半分は非医療者でできていた!

あなたも「人道主義者」になれる
いとう せいこう プロフィール

「国境なき医師団」を「MSF」と呼ぶ理由

その前にここで「国境なき医師団」という呼称を世界レベルに合わせます。彼ら発祥のフランスではそのままの意味で「Médecins Sans Frontières」と言い、その頭文字を取ってMSFと言うことがほとんどです(ただしアメリカの入管ではその英語版の表現がまったく通じませんでした。「ドクターズ・ウィズアウト・ボーダーズ」と特に「ウィズ」の「ズ」のところで舌を嚙むように頑張ったのですが、じっと見つめられ、肩をすくめられるだけでした)。そこで私たちもここでMSFと呼びます。

なぜそうするかというと、各国を取材するうち出会った日本人の女性スタッフにこう言われたことがあるからです。

「『国境なき医師団』って名前、固いじゃないですか。すごく男っぽいというか。でもそこで活動してるわたしたちは聖者なんかじゃないんです。日々悩みながら活動している普通の人間たちなんですよ」

そうか、なるほどなあと思った私は特にそれ以来、なるべくMSFと呼ぶようにしています。事実「団」の人は海外の方はもちろん、日本人スタッフもたいていそう呼んでいるようです。

MSFの活動は緊急救助だけではない!

あ、話が横にそれてるうちに、数年前の喫茶店での自分たちをおいてきぼりにしていました。広報にブリーフィングを受けている私に戻ります。

こうして私はノンメディカルのことをおおまかに知ったのですが、さらに活動内容の中にもそれまで聞き及んだことのない事例が多くあるのに驚いたのでした。

一つ例を書けば、東南アジアで性暴力が多発している地域に入り、生殖や女性の健康に関する啓発活動をしているのも「国境なき医師団」だというのです。

つまり紛争、災害のあといち早く急行する彼らは、同時に他の様々なミッションにも参加しており、そうした活動については常に「団」の内部で議論されながら新しく進んでいるのでした。私は恥ずかしながら、彼らのそうした一面も知らずにいました。

ということで、取材が始まってから10分ほどして、ほとんど赤面した状態の私は、広報の方にこう詰め寄っていたのです。

「そういうことって、その、多くの人が知っていることですか? それともひょっとして 僕だけが知らないんでしょうか?」

広報は気を遣って下さいました。

「弊団でもきちんと伝えているつもりなんですが、なかなか広まっていないかもしれませんね」

そこで私は生来の好奇心も、恥をかき消したい一念もあってこう言いました。

「であれば、僕が取材をしてなるべくたくさんの方に伝えるのはどうでしょう? もちろんたいした力にはなれませんが、発表の場はあれこれあると思います」

実際、もっともっと私はMSFについて知りたかったのです。