「英語力」という新たなカースト

多くのインド人は英語が話せると思っている人も少なくないだろう。だが、インドには多種多様な民族がおり、紙幣は17もの言語が記載されているほどの多言語社会。一番の公用語がヒンディー語で二番が英語と考えられているが、第一公用語のヒンディー語でも人口の半数程度、英語にいたっては人口の1割程度しか話せる人がいないそう。

でも、この1割の層なかでも“ネイティブ”と“インドなまり”の英語で世界が分断されている

-AD-

ヒンディー語で授業を教える公立の「ヒンディー・ミディアム校」でも、公立のイングリッシュ・ミディアム校でも英語は学べるが、私立のイングリッシュ・ミディアム校は欧米系インターナショナル・スクール(もしくはアメリカン・スクールやブリティッシュ・スクール)に近い存在で、保護者はインドの富裕層で構成されており、教師たちも保護者たちも“なまり”のない英語を話す。

つまり、イングリッシュ・ミディアム校における公立と私立の違いは、話す英語の発音で分かる。たとえ英語が話せても、ネイティブの発音かどうかで属する社会階層が明らかになってしまうのだ。つまり、1950年に禁止されたカーストにとって代わったのが英語力、といっても過言ではない。現代のインド社会は英語で分断されているのだ。

願書を取りに行くためだけに泊まり込みの行列

『ヒンディー・ミディアム』より

私立のイングリッシュ・ミディアム校はその多くが学校周辺在住の子供を優先して合格させるポリシーをもっているため、ラージとミータは生まれ育った下町を離れて高級住宅地へ引っ越す。そこで近所の富裕層のママ友やパパ友を作ろうとするが、ネイティブ並みに英語が話せないことや、下町の振る舞いをしてしまうことが原因で、なかなか受けいれてもらえない。

それでもお受験をあきらめきれないミータは夫をせっついて入学願書を取りに行かせるが、そこで目にしたものは、iPhone発売日のアップルストア並みの長蛇の列! 寝袋やペットボトル(何に使うかは想像ができるだろう)を持ち込み、父親たちが泊り込みで並ぶのだ。