1週間の旅の終わり、
自然から教わった大切なこと

ブルース・ペニンシュラ国立公園を歩いているとき、不意にホリーさんがうららさんの腕を取った。この旅でいちばんいい瞬間だった。

最後の夜、ささやかな打ち上げをした。1週間近く時間をともにした仲間。別れを思うと旅を締めくくる言葉がなかなか出ない。口火を切ったのは、やっぱりホリーさんだった。

「この1週間で、私もみなさんも見違えるように変わりました。とくにうらら、初日の顔と今の顔、全然違っているのに気づいている? 初日、あなたは身構えていて、あまり人を寄せ付けなかった。でも今日、人目もはばからずに湖に入ったでしょう? それを見て、あなたと旅ができてよかったと心底思ったの」

思えば初日、カヌーの漕ぎ方を指導するとき、ホリーさんはうららさんに「体に触れて教えてもいい?」と断っていた。今、彼女の手はうららさんの背中にずっとある。

「頑張らなきゃ、しっかりしなきゃって、私はいつも肩に力が入りすぎるんです。でも自然の中では否応なく丸腰になれて。そしたら素直に感情が出てきて」。感極まって言葉に詰まってしまった。うららさんにホリーさんがかけた言葉が忘れられない。

トレイルの途中、ホリーさんが拾って見せてくれた鳥の羽根。急がず、肩の力を抜いて自然の中を歩けば、美しいものがたくさん見つかると、彼女から教わった。

「何歳になっても、自然は偉大な先生なの。新しい世界や本当の自分を教えてくれる存在だからこそ、私たちには自然というものが必要なのよ」

見栄も劣等感もいらない。できないことはできないでいい。弱い自分を認めたとき、自然は本当の姿を見せてくれる。「余計なエネルギーを全部吸い取ってくれた」とうららさんが言う通り、自然は人を裸にする。それをありありと証明してくれたのが、ほかでもない彼女だった。

PROFILE

安竜うらら Urara Aryu
女優、モデル。福島県いわき市生まれ。テレビ、映画、舞台などで活躍する傍ら、ラジオパーソナリティとしても活動。TOKYO FM「シンクロのシティ」レギュラー出演を8年務める。10月25日公開の松尾スズキ監督作品『108~海馬五郎の復讐と冒険~』に出演。

●情報は、FRaU2019年10月号発売時点のものです。
※記事内の通貨表記(CAD)は、1CAD=約79.47円(2019年8月15日現在)です。
※紹介している店や施設の営業時間、定休日、価格などは取材時から変更している可能性があります。

Photographer:Kasane Nogawa Text & Edit:Yuriko Kobayashi Model:Urara Aryu Coordination:Sumi Sato Cooperation:Ontario Outdoor Adventures