カナダ東部随一の、豊かでスケールの大きな自然が広がるオンタリオ州。カヌーや乗馬、ハイキングなど、楽しめるアウトドアもじつに多様。女優の安竜うららさんが、自然をめぐる1週間の旅に出た。

【Flow】
世界一静かな乗り物、
奇跡みたいな時間

ALGONQUIN PROVINCIAL PARK

2400以上もの湖沼が点在するアルゴンキン州立公園はカヌーイストたちの憧れの地。

「カヌーは地球上で一番静かな乗り物だ」と言っていたのは誰だっただろう。聞こえるのは自分のオールが水を捉える音だけで、今朝までいたトロントの喧騒が懐かしい。安竜うららさんは大丈夫だろうか。

1週間、ネイチャーガイドとして同行してくれるホリー・ブレフゲンさん。今回、スタッフ4名が全員女性だと伝えると、「ウィメンズ・パワー、素敵ね!」と笑っていた。

前を行くカヌーは滑らかに湖面を滑り、ときどき後方に乗るガイドのホリーさんが身振り手振りで説明している様子が見える。うん、大丈夫そう。

持参した枝を削ってスティックを作り、ソーセージを焼く。ホリーさんは野外で料理する知恵をたくさん持っていた。

トロント市内から車で3時間半。アルゴンキン州立公園はカナダでもっとも古い州立公園。ホリー・ブレフゲンさんはこの公園で長年ネイチャーガイドをしている女性だ。湖に出て1時間ほど。先導するホリーさんが唇に手を当て、「静かに」というジェスチャーを送ってきた。

双眼鏡で野生動物を探すうららさん。このあと、ムースに遭遇した。

湖のどん詰まりのような場所。しばらくカヌーを静止し息を潜めていると、茂みの中からヌッと巨体が現れた。メスのムースだった。カメラを構えるのも忘れてただ一点を見つめているうららさんが「あっ」と小さく声をあげる。

偶然出会ったムースの母子。臆病な動物だけれど、これだけ接近できるのは、ほとんど音が出ないカナディアンカヌーだからこそ。

指差す先の森から子犬のようなものが2匹、ぴょんぴょんと跳ね出す。先ほどのムースは双子の赤ちゃんを持つお母さんだったのだ。

ゆっくりと水草をはみ、対岸の森へ彼女らが消えるまで、私たちはじっとその平和な光景を見ていた。10メートル以上離れていただろうに、彼女らが小枝を分けて森を歩く音がはっきり聞こえた。その姿が完全に森の中に消えたとき、自然と全員で目を合わせた。少し潤んだうららさんの目が、この数分間の、奇跡みたいな出来事を物語っていた。

途中、見晴らしのいいキャンプサイトに上陸して焚き火ランチ。