「在野研究」はいまなぜブームなのか? 大学の外から学問する面白さ

凡人なりの攻め方、楽しみ方がある
荒木 優太 プロフィール

だからこそ、『ビギナーズ』は多様な実例を揃えることで、個々の読者が自身が使える技法を抽出する材料になるような一書を目指したつもりだ。

目次の直後には〈ハード/ソフト〉×〈ひとり/みんな〉の四象限でできた「忙しい人の四タイプの目次」をつけたが、たとえばこれなどを頼りに、各人、知的生活をより豊かなものにしていく機会として使ってくれたら嬉しい。

 

在野的な書き手たちの時代

それにしても、昨今、大学に籍をもたないものの研究的な著作者たちの活躍がめざましい。森田真生『数学する身体』(2015)、稀見理都『エロマンガ表現史』(2017)、大竹晋『大乗非仏説をこえて』(2018)など枚挙にいとまがない。礫川全次『独学で歴史家になる方法』(2018)は定年後からの歴史学の独学方法を直接の主題にしてさえいる。読書猿『アイデア大全』『問題解決大全』(2017)もこれら潮流の一つに数えてもいいか。

本編著の執筆者のなかでも、山本貴光+吉川浩満『脳がわかれば心がわかるか』(2016)、熊澤辰徳『趣味からはじめる昆虫学』(2016)や朝里樹『日本現代怪異事典』(2018)といった著作に、なにかの機会で触れた人もいるのではないか。そもそも、私が編著を依頼されたのは『これからのエリック・ホッファーのために』(2016)という過去の在野研究者たちの人生と業績を紹介する列伝本を刊行し、それがそれなりにヒットした、という経緯がある。

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なぜ、在野的な書き手が目立っているのか。書き手の側に足並みをそろえた統一的意識があるとはとうてい思えないが、読者や編集者がなぜこういったものに注目したがるのか、という受け手の側の状況論的な問いならば、相応の答えが出せる。

簡単にいうと、もはや大学に就職することは研究(志望)者にとって自明の選択肢ではない、という理解が共通のものとして広がっているからだ。