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「在野研究」はいまなぜブームなのか? 大学の外から学問する面白さ

凡人なりの攻め方、楽しみ方がある

どれほど熱心にバンド活動に取り組んだとしても、そして仮に秀でた才に恵まれたとしても、音楽で飯が食えるようになる確率はとほうもなく低い。ならば、費やしてきたその時間と熱意はすべてムダだったのだろうか。何者にもなれないのだから何もしない方がよかったのか?

そんなことはない。アーティストとしてデビューせずとも、たとえば彼女とのドライブでかけるための最強クリスマスヒットメドレーを自作するとき、たとえばYouTubeでベースの弾き方のコツを教えるための動画を撮るとき、たとえば子守唄で子供を寝つかせるとき、その声の響きや指使いにはかつての熱が鼓吹されている。

在野研究とは、要するに、子守唄が超絶に上手いサラリーマンの学問版のことだ。

 

唯一の正解などない

もう少し丁寧に説明しよう。在野研究者とは、ごく簡単に言えば、大学に所属をもたない研究者のことを指す。最近、私が編者となって出版した『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』(明石書店、以下『ビギナーズ』と略記)は、そういった大学の外で活動してきた書き手総勢15人に、自身の研究と生活を振り返ってもらうことで、卒業をした後でも学問をしたいと思う読者になんらかのヒントを与えられないかと考え、企画したものだ。

序文でも書いたことだが、本書は指南書ではない。言い換えれば、在野研究の方法の正解が書いてあるようなタイプの本ではない。

というのも、在野研究と一口にいっても、それは〈就職している? 結婚している? 子供は?/どんな研究を? どれくらい? どの媒体で?〉といった多様なニーズと制約のなかで個々人が選ばねばならないものだからだ。在野の幅広さ(前項の問い)と研究の幅広さ(後項の問い)、この掛け算のなかで個々の研究生活が決まるのだから、自然、在野研究は多様なものにならざるをえず、唯一の正解を提示するのはむしろ危険なことだ。