どうしてこんなにかわいいの? 日本人が「金魚」を愛して700年の理由

「異形の美しさ」と日本人の自然観
飯田 かおる プロフィール

異形のもの、小さいもの好き

実は金魚が中国から欧米に渡ったのは、日本から遅れることわずか100年余りだという。オランダから各国へ広がっていったとされているが、ともに数百年の歴史をもちながらどうして日本でばかり特異的に金魚文化が発展したのだろうか。興味深い記述が目に留まった。

〈もっとも、人間の好みに合わせた金魚の姿は、見た目には美しくても、自然にはあり得ない、奇形に近い形になっている。その証拠に、「らんちう」などを解剖してみると、脊椎骨その他の骨格は著しく短縮変形、癒着退化して、かわいそうなほど不自然な変形が起こっているのがわかる〉

人間が改良を重ねた結果生まれた“異形”の美しさ……。これは、日本人独特の感性である“かわいい”の概念と無関係ではないような気がする。

らんちゅう(Photo by iStock)

日本人の語る“かわいい”には、美しさに加え、時として不格好さやグロテスクなどの要素も交じっている、とよく論じられる。“キモかわいい”なんて表現がまさにそうだ。たとえば、眼球が左右に大きく突き出した「出目金」などが日本で人気となった背景には、そうした日本人の感性と金魚の相性の良さがあったのではないだろうか。

 

また、金魚が“小さきもの”であったことも日本人の心を捉えたのかもしれない。「なにもなにもちいさきものはみなうつくし」という清少納言の言葉があるが、古来より日本人は大きく派手なものより、小さくささやかなものを愛でてきた。盆栽、4畳半の茶室、現代のカプセルホテル、トランジスタラジオにウォークマン……といった具合に枚挙にいとまがない。

〈長屋住まいの貧しくせまい生活空間に楽しみを引き寄せる対象としても、金魚玉に入った赤い小さな金魚はぴったりの相手だった〉

過密社会だった江戸の町に起こった金魚ブームは、日本人に深く根ざした“小さきもの”に対する愛着とリンク。この本では金魚玉の金魚こそ、過密都市江戸文化の申し子であり、さらには日本人の自然観と深く関わるのではないかとひも解いていく。

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