なぜ厳しい治療に挑むのか

分娩中の高橋さん。病院では毎日のようにリスクの高い出産があるが、医師もスタッフも「希望」を捨てない心が大切だという 撮影/河合蘭

他施設が実施していない中、高橋さんたちは、なぜ、このような厳しい治療にチャレンジしているのだろうか。そう聞くと、こんな答えが返ってきた。

「命に対して、医療は、謙虚でなければならないと思うのです。命の可能性は、医師でも本当にはわかりません。

医師が一般的に『これはあきらめるしかない』と考える状況は、いろいろあります。そして、これは絶対にだめだ、と医師が決めてしまったら、たいてい、命はそこで終わってしまいます

でも実際は、そんな状況でも助かる子に遭遇することはあります。それなら、ある程度可能性が見いだせるケースを探して、積極的に命を救おうとチャレンジする病院があってもいいのではないでしょうか。

一般的に『これより先は手を引く』と決められている線を越えるのは簡単なことではありませんが、私たちがデータを蓄積していけば、もしかしたら、これまで救えなかった命を救える未来を作っていけるかもしれません」

高橋さんの言葉を聞いていると、私は、新しい医療技術が生まれる波打ち際に立って、波音を聞いているような気がしてきた。そこは夢と不安が交錯する場所だ。ただ、不安もあるが、振り返れば、今、当たり前にある医療も、かつては、誰かの夢と不安の中で揺れていた時期があったはずだ