大ヒットドラマ「全裸監督」の重要論点〜AV産業は昭和を引きずり…

「SMぽいの好き」を観て、驚いた
井戸 まさえ プロフィール

「免罪符」としてのセリフ

このドラマの構成の最初のポイントは、第一話で早々に明かされる「妻の浮気」である。

家族のために必死で働き疲れ果てたサラリーマン村西とおるは、日々のセックスで妻を満足させることができない。しかし、そんな村西を妻はこう慰める。

「今日はうまくいくと思ったのにね。でも仕事の方はうまくいってよかったじゃない 期待してますよ」

仕事がうまくいけば、妻は夫を認め、満足してくれるはず。村西はそう解釈していた。

しかし、その後に待ち受けるのは、売上金が社内の有力営業マンに盗まれ混乱する会社であり、衝撃の中で村西が家に戻る、妻は郵便局員と浮気の真っ最中、しかも自分とのセックス時には見せない絶頂の高みに昇っていたのである。

 

村西は激昂し、郵便局員を殴り、妻にも摑みかかる。

「なんて女なんだお前は、みっともない」

この言葉を浴びた妻は村西を突き飛ばして、冷たくこう叫ぶのだ。

「みっともないのはあんたでしょ」……「あんたでイったことないのよ。一回もね」

この台詞で、このドラマは、その後の村西の行動が全て許される「免罪符」を得るのである。

真面目で家族思いの営業マンが、AV業界で掟破りもしながら、また時にはAV女優たちに犠牲を背負わせ、結果的には踏み台にしてのし上がっていく、そのモチベーションの原点が「妻の浮気」にあり、その行為と言葉によって男のプライドをズタズタにされたことを目撃することによって、視聴者たちは納得するのである。

加えて、前述通り、AV男優としても活動している村西とおるが、妻を満足させることもできず、寝取られた経験を持つ「負け組」であったことで、どこか視聴者と同じ人間なのだという安心感と共感を得ることに成功しているとも言える。