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高血圧に糖尿病…生活習慣病は「薬に頼らずに治せる」第一人者が語る

慈恵医大・ 横山啓太郎教授

生活習慣病の薬を飲み始めたら、死ぬまで飲み続けなくてはならないと思っている人に吉報だ。新しい考え方で高血圧や高血糖に抗う道を模索する医師がいる。この道の第一人者に秘訣を聞いた。

薬で寿命は延びない

「かつては、高血圧の患者には、とりあえず降圧剤を出すような『ふつう』の治療をしていました。たしかに薬を飲めば、血圧は一気に10~20mmHgほど下がります。ですが、数値だけを下げても、根本的な解決にはならないと気づいたのです」

こう話すのは、東京慈恵会医科大学教授で、同大病院晴海トリトンクリニック所長を務める横山啓太郎氏だ。

50代以上となれば、ほとんどの人が高血圧や、高血糖、高コレステロールを抱えている。病院で「生活習慣病を放置すると、脳出血や心筋梗を起こす恐れがあります」と言われて、薬を飲み続けている人は多いだろう。

もちろん、薬を飲み始めれば血圧は下がる。数値が下がれば、病気が治っているように感じて、安心してしまいがちだ。だが、薬で血圧を下げるだけで本当に患者は健康になるのか。そうした根源的な疑問を投げかける医師が現れ始めている。

その第一人者が、薬だけに頼らずに生活習慣病を治す取り組みを積極的に行う横山教授だ。

高血圧をはじめとした生活習慣病を30年にわたり診察し、'16年、日常生活の見直しを促すことで生活習慣病を治す「行動変容外来」を大学病院として日本で初めて開設した。

 

横山教授は、治療法を見直すきっかけとなった実体験をこう語る(以下、括弧内は横山教授)

「60代の会社役員の男性を診ていた時のことです。この方は血圧が高めで降圧剤を飲んでいましたが、薬のおかげで血圧も正常値内に収まっていました。

ですが、この患者さんがある冬の朝に、脳出血を起こして病院に運び込まれたのです。

血圧は問題ないはずなのになぜ、と疑問に思い、患者さんが回復してから24時間血圧計を装着してもらったところ、早朝、散歩をしている時に血圧227/150mmHgにまで急上昇していました。

その方は安静にして血圧を測った時には正常値なのに、寒いところでは、血圧が急上昇しやすい体質だったのです。たとえ降圧剤で血圧が正常値内に収まっていたとしても、脳出血が起きるケースもあるという事実を突き付けられました」

降圧剤で安静時の血圧を下げたとしても、脳出血や心筋梗塞の発症率が減少し、薬を飲んでいない人と比べても遜色ないほどに寿命が延びるとは限らない。

この患者であれば早朝の散歩を控えるなど、血圧が上がりやすいタイミングを把握し、そうした危険を避けることも有効なのだ。