日本の歴史がずっと、中国の「三国志」とともに歩んできた理由

日中戦争期、「三国志」は大ブームに
箱崎 みどり プロフィール

現代の「三国志」ブームを決定づけた、吉川英治『三國志』は、日中戦争の最中に、毎日、新聞に連載されていました。当時、吉川『三國志』だけでなく「三国志」に関連する書籍が何冊も出される、日中戦争下の「三国志」ブームがありました。

中国と戦争をしている中、中国の歴史小説が流行ったなんておかしい、と思われるかもしれません。しかし、それこそが、「三国志」が日本史の中で担ってきた欠かせない役割を知る鍵なのです。

 

実は、海外の英雄を描いた大河ドラマである「三国志」は、日本において、中国を知るための鏡、虎の巻としての役割を期待され続けてきました

ロシアを知りたい人はドストエフスキーを、ドイツを知りたい人はゲーテを、フランスならカミュやデュマを読むように、中国を理解し中国に学ぶために、『日本書紀』の昔から「三国志」が参照され、今も中国の小説と言えば、中国近代文学の父・魯迅や、ノーベル文学賞を受賞した莫言よりも先に、『三国志演義』の名が挙がります。

日本では昔から「中国について知りたいなら、三国志を読みなさい!」と言われてきたのです。通史的な〝「三国志」の日本史〟に加えて、「三国志」に期待されてきた中国理解のツールとしての側面にも光を当てていきます。

『三国志』は中国理解のツール(photo by iStock)

「三国志」好きの方にも初心者にも

『愛と欲望の三国志』では、主に日本語で書かれた「三国志」について語っていきますが、「三国志」好きの方にとっては、すでに読んだ「三国志」について見直せる本、新たな発見のある本となるでしょう。

かたや、初心者の方にとっては、これから読むべき「三国志」を探せるブックガイドにもなる本です。「三国志」についての本は、何だかたくさんあって、まずどれを読めば良いのか分からないという方に、特におすすめします!

隣国の古代史を描く小説『三国志演義』を、繰り返し繰り返し語りなおしてきた日本。その様々な愛の形、そして、期待した役割を「三国志」に担わせてきた欲望のさまが、その歴史を眺めるだけでも分かってきますよ。

貴方は普段「三国志」を読むときに、それがどんな「三国志」なのか、あまり意識することはないのではないでしょうか。そんな貴方の「三国志」を読む目線を少し変えるきっかけになれば嬉しいです。