「乙武義足プロジェクト」が進行している。膝がない、腕がない、歩いた経験がない――乙武洋匡氏はそんな身体の「三重苦」と闘いながら、歩行練習に励んでいる。

義手が完成し、義足練習は新しいフェーズに入った。つい先日歩行距離の記録を伸ばしたばかりだったにもかかわらず、義手の「400グラムの重み」は乙武氏にとって大きな壁となった。バランスを取れなくなってしまったのだ。

果たしてスランプから抜け出せるのだろうか。

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肌寒い梅雨の日の練習

6月18日。

梅雨に入ると、肌寒い雨の日が続いた。

「遅くなって、すみません!」

電車が遅れて10分ほど遅刻した内田氏は、少し息があがり、顔に汗が光っている。

「お疲れさま」

私はそう答える。
この一週間の体調などについて話をし、内田氏の前に身体を横たえた。

撮影/森清

「ストレッチポールのおかげかな、上半身が柔らかくなってきた気がするんだ」
「ほんとうですか、いいですね!」

内田氏は私の股関節に力を加えながら、前日に始まったサッカー南米選手権(コパ・アメリカ)の話を始めた。

「乙武さん、サッカーのコパ・アメリカ観てます?」
「今回は地上波で放送してないんだよね。だからニュース映像くらい」
「初戦はチリに圧倒されちゃいましたね。あんな大差がつくとは……」
「そのなかでも期待の久保建英は、キラリと光るプレーを見せてたよね」

内田氏も私も大のスポーツ好き。こうしてサッカーの話に花を咲かせながらストレッチに励むことで、私の筋肉だけでなく、心までもほぐされていくのだった。