新幹線清掃スタッフ「7分間の奇跡」海外の賞賛を手放しに喜べない理由

過酷な労働条件と表裏一体
川辺 謙一 プロフィール

「頑張り」に頼る危うさ

一方、「誇れないこと」は、このような労働環境がきびしい職場が、今なお存在することだ。もし新幹線のダイヤや東京駅の施設に余裕があれば、ここまで短時間で作業を終わらせる必要はないし、作業空間や時間の制約が多い東京駅で作業をする必要もないので、整備スタッフが狭い職場で時間に追われることもない。ところが実際は、前述した「止むを得ない理由」があり、7分というきびしい時間制限を設けて、整備スタッフを酷使しているのだ。

労働環境を重視すれば、本来はこうした前時代的な職場をなくすべきなのに、JRはなくしていない。これは先進国の鉄道として恥ずべきことであろう。

 

もちろん、JRは「なくしたくてもなくせない」ので、整備スタッフの「頑張り」に頼っているのだろう。ただ、今は日本でも若年層を中心に労働に対する価値観が変わってきている。いつまでも現場の「頑張り」に頼っていられるわけではない。

ある元整備スタッフは、メディアがこの職場を持ち上げて伝える姿勢に不快感を示した上で、過去に東京駅の東北新幹線ホームで働いた経験を、筆者にくわしく話してくれた。どうも、現場は、筆者が想像した以上にヘビーな状況のようだ。

以上述べた「誇れること」と「誇れないこと」は、互いに強く結びついている。そのため、「誇れること」だけを抜き出して語ると不自然になる。

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ところが国内メディアの多くは、整備スタッフの働きぶりや、服装の珍しさをわかりやすく伝えようとするあまり、「世界が驚く神業」「清掃員のおもてなしの心」などと、安易に日本人の優位性と結びつけて紹介する傾向がある。

もちろん、メディアで紹介されることによって整備スタッフの士気が上がるならばよいが、メディアが「誇れること」だけを過度に強調して持ち上げるのは避けるべきであろう。そう伝えることが、人々が抱くイメージと現実が乖離する原因になるからだ。