東京駅で、北陸新幹線の整備に向かうスタッフ(筆者撮影)

新幹線清掃スタッフ「7分間の奇跡」海外の賞賛を手放しに喜べない理由

過酷な労働条件と表裏一体

「世界一の現場」とは言うものの…

この夏も、アロハシャツを着た集団が東京駅の東北新幹線ホームに出現した。彼ら彼女らは、黒いハンチング帽をかぶってホームの端に等間隔で立ち、接近する列車に向かって一礼した。 

この集団はいったい何者か。東京駅で東北・上越・北陸・山形・秋田新幹線の列車を利用したことがある方ならお気づきであろう。最近はメディアで紹介される機会が増えたので、ご存知の方も多いかもしれない。

そう、新幹線車内の清掃を行う整備スタッフだ。季節に合わせて服装や、帽子につけるアクセサリーを変えており、アロハシャツは夏の服装の定番となっている。

整備スタッフたちは、作業を最短7分で終える。近年はその活躍ぶりを、米の国際放送(CNN)が「セブン・ミニッツ・ミラクル(7分間の奇跡)」という言葉とともに紹介したり、米ハーバード大学経営大学院が授業で取り上げたりしたこともあり、国内のみならず海外からも注目されるようになった。

東京駅のホームに立つ整備スタッフ(筆者撮影)

このため国内メディアは、整備スタッフの仕事ぶりを、「海外メディアが絶賛」とか「世界一の現場」などという言葉とともに紹介することが多い。たしかに、編成が長い列車の清掃をこれほどの短時間で済ませる例は、世界的にも珍しい。

とはいえ、これは本当に、世界に誇れることなのだろうか。整備スタッフの労働環境から考えてみよう。

 

東京駅の新幹線ホームでは、「車両の整備が済むまでしばらくお待ちください」という放送をたびたび耳にする。

ここでいう「車両の整備」とは、旅客を乗せる前の車両で行われる準備作業であり、これが終わらないと営業列車として出発できない。この作業には、先ほど述べた車内の清掃だけでなく、洗面所やトイレが消費する水の補給や、汚水の排出などがふくまれる。

この「車両の整備」は、本来は駅ではなく、車庫で実施するものだ。車庫には、車両の日常的な点検を行う施設があるし、駅よりも、作業に必要な空間や時間を確保しやすいからだ。

ところが、東京駅では、列車が折り返すときの停車時間を利用して「車両の整備」を実施することが少なくない。東京駅を発着する東海道・東北新幹線では、旅客を乗せた営業列車が最短3分間隔で走っており、ダイヤに余裕がないので、東京駅と車庫を結ぶ回送列車を走らせることができないことが多いからだ。