「全自動化」は幻想だ 「AIは仕事を奪う」について持つべき視点

連載2回「AIブームの次にくるもの」
松田 雄馬 プロフィール

「AIを使って作ってみたいシステムがある」

「弊社もAIに取り組むことになった。開発チームを作って、情報収集しながら進めているのだが、なかなか形にならず……。アドバイスをいただきたい」

「畑違いの分野の者なのだが、これだけAIが話題になっていると、無視しておくわけにもいかず……。一通り勉強してみたのだが、学者さんの話は難しくてよくわからない。簡単なことだけでもいいので、お話を聞かせてほしい」

非常に多種多様な、多岐にわたる分野からのご相談をいただくのだが、よくよく聞いていくと、こうした打診は大きく2つの要素に分解できるということがわかった。

  1. そもそもAIというものがわかっていないので、概要をつかみたい
  2. 自社の事業(自分の仕事)の困りごとをAIで解決したい

1.に関しては、「いま、世の中では『AI』というものをよく知らない人が、知っている風に話すことも多いです。そうした有象無象の情報が、理解をややこしくしているのです」といった点も含めてご説明すると、「なるほど」と言っていただくことが多い。

2.に関しては、ご相談自体には「AI」という表現があるが、むしろそれを無視して対応する。「いま、何に困っているのか」「どういう状態になりたいのか」という2点さえつかめれば、どんな分野であれ、自分の持つ技術や知識を使って貢献できるかどうかの判断はできる。

まったく異分野のご相談であれば話は別だが、「AI」というキーワードでご相談をしていただいている以上、何かしら接点を見出せる、というのが、筆者の経験論である。

ロボットと人間接点はある Photo by Getty Images

助けを求める人が望んでいること

たとえば、このようなご相談を、ある飲食店を営む経営者さんからいただいたことがある。

 

「おかげさまで、経営も順調に進んでいて、いまは複数店舗を切り盛りしています。ただ、これまでは、アルバイトのシフトは慣れた社員が手で組んでいたんですが、店舗数が増え、また、アルバイトの要望も多種多様になってきて、人手でシフトを組むには限界で……。

なんかこう、AIにアルバイトの情報を学習させたら賢く計算してくれて、いい感じにシフトを組んでくれるような、そんな仕組みをうちも作りたいと思っているんですが……。そんなことってできないんでしょうか?」

実は、ある程度プログラムを組んだことのある人であれば、このお話は(「AI」かどうかはさておき)「シフトスケジューリング問題」と呼ばれる「最適化問題」の1つだということがすぐにわかる。

もちろん、飲食店の経営者さんに「最適化問題」などという用語を使っても、イメージできないかもしれない。そこで、「ご相談の件は、それほど難しくない問題です。いろんなシフトパターンを自動的に計算して、そこから一番理想に近いものを選んでやる、そんなプログラムを作ればいいんです」と、なるべく平易な言葉で丁寧に説明する。

すると、経営者さんはすぐにイメージをはじめ、「ぜひやってみたい!」とおっしゃってくださる。こうして、シフトスケジュールシステム開発プロジェクトが発足した──。

筆者としては、この経験談で興味深い点がある。

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