「全自動化」は幻想だ 「AIは仕事を奪う」について持つべき視点

連載2回「AIブームの次にくるもの」
松田 雄馬 プロフィール

少し長い話になったが、このように、「弱いAI」は、人間の「作業」を減らすことはあっても、人間の「職業」を減らすことにはならないのである。

もちろん、「これまで3人でやっていた作業を1人でできるように効率化する」というような状況は、すでに起きている。しかし、その分、作業効率化のためのシステムを作る作業や、そのシステムをメンテナンスする作業など、新たな作業は常に生まれている。

「弱いAI」によって、「職業」自体がなくなるということは、ない。

ピント外れな「AI人材25万人計画」

「ある日突然、新しい、革新的な技術が現れるのではないか。その時、いま自分がやっている仕事を自動的におこなうシステムが現れ、自分は、その職場を追い出されてしまうのではないか」

変化の激しい現代社会において、このように考えてしまう人もいるだろう。

実際、ガートナー社は2018年のレポートで「AIは180万人の仕事を奪うが230万の雇用を創出する」と記述している。

そうなると、「新たに創出された仕事に就ける人はいいが、自分がその仕事に就けるとは限らない」と心配する人がいても不思議はない。

robotそれでも職場から人間は消えない Illustration by 3alexd

この春、政府が「AI人材25万人計画」なるものを発表し、話題を集めた。「全ての高校卒業生が、理数・データサイエンス・AIに関する基礎的なリテラシーを習得」することが目的とのことであり、「世界で活躍できるレベルの人材の発掘・育成」を目指しているという。

この計画には、あちこちから疑問の声が上がっている。筆者も同様で、「そもそも、これを作った人は、理数・データサイエンス・AIに関する基礎的なリテラシーを習得しているのか?」と首をかしげざるを得なかった。

現状においても、多くの高校で、理数科目が教えられている。高校レベルの理数科目の知識を使いこなすことができれば、「データサイエンス」の世界で充分に活躍できる素養は身につく。

にもかかわらず、世の中では、「AIに仕事を奪われるのではないか」「新しい仕事に自分が就けるとは限らないのではないか」といった戦々恐々とした空気が蔓延している。

政府の発表した「AI人材25万人計画」は、そうした現状をまったく考慮に入れていない人が作ったとしか思えないのである。

 

では、「仕事が奪われる」「新しい仕事を作り出す」というのは、どういうことなのか。

この点について、何らかの答えを出しておかないと、相変わらず、「AIに仕事を奪われるのではないか」「新しい仕事に自分が就けるとは限らないのではないか」といった空気が拭い去れない。

そこで、研究者としての筆者の経験から、考察を試みてみたい。

「AI」にまつわる相談、こう対応する

筆者は、大学院生の頃にはじめた脳型コンピュータに関する基礎研究をきっかけに、長年、人工知能(AI)に関する研究開発に携わっている。

現在は、勤めていた研究所を退職し、合同会社アイキュベータという会社を立ち上げ、研究開発を継続している。そうした研究活動を日々おこなっていると、多くの方からご相談やご依頼をいただくことがある。

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