「俺はいま、人生の最終コーナーを回ったところにいて、ゴールはもう目前。だからこそ急ぐまい、急ぐまいと一歩ずつ踏みしめているんだ。大橋巨泉も坂上二郎も藤村俊二も、昭和9年生まれの仲間は、みーんな先にゴールしちゃったしね」
軽快な口ぶりでこう語るのは、コメディアンの財津一郎さん(85歳)だ。
'60年代、『てなもんや三度笠』(TBS系)での「非っ常にキビシ~ッ!」「~してチョウダィ!」などのギャグでお茶の間の人気者に。
以来、CMに映画にと引っ張りだこになり、NHKの大河ドラマや朝ドラにも度々出演し、名脇役の地位を不動のものにした。
だが、最近は露出が減っており、放送開始から20年近く同じ映像が使い続けられている「タケモトピアノ」のCMでしかお見かけしない。
「仕事の話をもらってもみんな断ってるんだ。俺は脳出血もやったし、肺も半分切った。いつ死んでもおかしくない。それで家族との時間を大事にしようと思ってね。
いまは妻の具合が悪いから炊事、洗濯、掃除、全部やっている。いわば最後のご奉公だな。だから、テレビに出ている場合じゃないんだよ。タケモトピアノは年単位の契約で、いまでも少しおカネが入ってくる。大した金額じゃないけど、ありがたいことです。
一番の楽しみはゴルフ。芸能界とはまったく関係ない人たちと、スコアを気にせず楽しんでいる。足が悪いから全然動けないけどね(笑)。でも、人間は不思議なもんで、ゴルフ場にいけばなんとかプレーできる。これ以上足腰を悪くしないためにも、気持ちのハリの面でも続けていきたいと思っています。
ゴルフ場までは自分で車を運転して行きますよ。とはいえ、いまは高齢ドライバーの問題が色々起きている。だから十二分、十三分に気をつけながら、かならず明るい時間に帰るようにしています」